東京ステーションギャラリーで開催中の「小林徳三郎」展でこれは、と思う作品、小林徳三郎(1912頃)《玉乗り》京都国立近代美術館蔵 の主観レビューをお届けします。
画面には椅子が点在し、人々は立つ・座る・背を向けるなど多様な姿勢で配置されています。
視点は固定されず、観客の視線が彷徨うような構図です。
青や茶、鈍い赤を基調とした抑制された色調に、部分的な黄色がアクセントとして効いています。
筆致は重ね塗りと滲みを活かした表現で、人物の輪郭は曖昧。
これにより、動きの残像や薄暗い室内の空気感が生まれています。
画面は暗く、沈鬱さを感じることから、見世物の最中よりも、始まる前の張り詰めた時間を想起させます。
また、観るべき演技がまだ立ち上がっていない為、人物の視線が定まっていません。
よって、これから何かが起こる直前の心理状態と読めます。
これは、ドガ、特にバレエ舞台裏作品との共通点が見出せます。
ただし、徳三郎はドガよりもさらに輪郭を崩し、明暗や色彩の滲みを強調することで、心理的・空気的な不安定さを前面に出しています。
このことから、より内省的であると言えるでしょう。
