光文社新書から刊行された『色彩がわかれば絵画がわかる』を読んでみました。
布施英利『色彩がわかれば絵画がわかる』(2013)光文社新書
そもそも色とは何なのでしょうか。
本書では、その仕組みを知るために、色の基本的な原理を一つ一つ知ることから始めています。
そうやって「色がわかった」とき、多彩な、色の世界の「美」が見えるのです。
色彩の理論がわかっていれば、美術を鑑賞するのに助けになる、「絵画がわかる」のです。
レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は、誰もが知っている名画です。
しかし、知っているようで、あまりわかっていない絵でもあります。
例えば、画面中央に描かれているキリストの服の色は何色か、すぐに答えられるでしょうか。
キリストは赤い服に、青い布を被せています。
しかし、すぐに答えられる人は、案外少ないのではないでしょうか。
宗教画では服の色ははじめから決められていることも多いのですが、本作ではレオナルドの色彩センスによって決められています。
その理由も、色彩の理論によって説明できるのです。
『最後の晩餐』には、空間があって、そこに秩序や、単なる秩序を超えた、美があるのです。
目次
序章
第1章 三つの色
1、色彩の基本
2、色の特性、いろいろ
3、ゲーテの色彩学
《間奏1》「色と色」で色になる
第2章 四つの色
1、四原色説
2、赤と青
3、白と黒
4、赤と黄と緑と青
《間奏2》『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の色彩
第3章 丸い色
1、調和
2、球体の宇宙
終章
優れた芸術というのは、えてして複雑なものと考えがちです。
しかし、実はその逆です。
優れた芸術作品は、シンプルで、基本を何よりも押さえているのです。
本書は基本の三原色から始め、丁寧に解説されています。
色彩感覚を磨いて、美が見えるという感動の瞬間を味わってみませんか。
筆者プロフィール
布施英利(ふせひでと)
批評家。1960年群馬県生まれ。東京藝術大学美術学部卒業。同大学院美術研究科博士課程修了。学術博士(同大学での博士号取得は、論文のみでは第一号だった)。著書に『脳の中の美術館』『体の中の美術館』(以上、筑摩書房) 、『美の方程式』(講談社)、『構図がわかれば絵画がわかる』(光文社新書)他多数。芸術と科学の交差する、美術の理論を研究している。