練馬区立美術館で開催中の「日本の中のマネ 出会い、120年のイメージ」展に行って来ました。
日本において、エドゥアール・マネはどのように紹介され、理解されたかといういわゆる「マネ受容」について考察する展覧会です。
マネは長年にわたり印象派のリーダーとして認識されていたにも関わらず、日本において彼の個展はわずか3回に留まっているし、国内のマネコレクションも多いとはいえないです。
我が国におけるマネ紹介のプロセスを振り返る必要があるのではないかとの問題意識から出発しています。
展覧会の構成は以下の通りです。
第1章:クールベと印象派のはざまで
第2章:日本所在のマネ作品
第3章:日本におけるマネ受容
第4章:現代のマネ解釈ー藤村泰昌と福田美蘭
第1章では、ポール・セザンヌやカミーユ・ピサロなどの印象派作品が展示されています。
マネが日本で初めて紹介されたとき、「印象派の首領」としてであったように、印象派の画家達に大きな影響を与えました。
しかし、マネは「印象派展」には参加せず、「現代生活」を捉え、同時代性を意識していました。
このことから、マネはレアリスムを代表する画家ギュスターヴ・クールベと同様の視点を持っていたことになります。
ただ、マネはクールベのように自らの芸術観を声高に表明することも、批判に対して論戦を交わすこともなく紳士然としていました。
同時代を描くことに専心したが、マネの視線は基本的にブルジョワジーの都市生活に向けられていました。
このような両者の本質的相違から、マネをクールベ的レアリスムの画家とすることの難しさが指摘されています。
マネ研究の第一人者である三浦篤氏はマネについて「ポスト・レアリスム」という位置付けを提案しています。
第3章では、日本におけるマネ受容について「美術批評・芸術論」と「具体的な作例に見出すマネ受容」のふたつに分類して考察しています。
前者として、森鷗外の「エミル、ゾラが没理想」『しがらみ草紙』が紹介されています。
これは、レアリスムと自然主義の区別なく「没理想主義」の始祖をエミール・ゾラとした森が、ゾラについて語るなかで、マネ擁護の先鞭をつけたゾラの美術批評について言及したものです。
後者においては、石井柏亭の「草上の小憩」(1904年)を挙げることができます。
題目からもマネの「草上の昼食」へのオマージュであることが分かります。
草の上で寛ぐ4人の少年少女が描かれ、鑑賞者に視線を投げかけています。
背景の木々の垂直と地平線の水平から動きは感じられず、安定している印象です。
第4章では、現代におけるマネ解釈を森村泰昌氏と福田美蘭氏の作品から読み解きます。
福田美蘭「つるばら『エドゥアール・マネ』」(2022年)は必見です。
マネは複製図版からイメージを自在に選びました。
そこから着想を得て、ネット上のマネ作品とバラの画像を組み合わせた絵画が作られました。
マネは高い評価を得ている割には理解されているとは言い難いです。
本展では日本におけるマネ理解の全体像を俯瞰することができます。
なかなか無い貴重な展覧会です。
おすすめします。
会期:2022年9月4日(日)〜11月3日(木・祝)
休館日:月曜日
※ただし9月19日(月・祝)と10月10日(月・祝)は開館、翌9月20日(火)と10月11日(火)は休館
開館時間:10:00〜18:00
※入館は17:30まで
観覧料:一般1,000円
高校・大学生および65〜74歳800円
中学生以下および75歳以上無料
障害者(一般)500円
障害者(高校・大学生)400円
団体(一般)800円
団体(高校・大学生)700円
ぐるっとパスご利用の方500円(年齢などによる割引の対象外になります)
練馬区文化振興協会友の会会員ご招待(同伴者1名まで)
※観覧当日、受付で会員証をご提示のうえ、招待券をお受取ください。
※一般以外のチケットをお買い求めの際は、証明できるものをご提示ください。
(健康保険証・運転免許証・障害者手帳など)
※障害がある方の付き添いでお越しの場合、1名様までは障害者料金でご観覧いただけます。
※団体料金は、20名様以上の観覧で適用となります。
※当館は事前予約制ではありません。当日、チケットカウンターでチケットをお求めください。
主催:練馬区立美術館(公益財団法人練馬区文化振興協会)
協力:兵庫県立美術館、DNP大日本印刷
アクセス:西武池袋線中村橋駅下車徒歩3分