装いの力 異性装の日本史 | パラレル

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松濤美術館で開催中の「装いの力 異性装の日本史」へ行って来ました。

 

本展は、日本における様々な時代の異性装を通して、性の越境を可能とする「装いの力」

について考察するものです。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

日本のいにしえの異性装

戦う女性ー女武者

”美しい”男性ー若衆

江戸の異性装

江戸の異性装ー物語の登場人物・祭礼

近代化社会における異性装

現代の異性装

現代から未来へと続く異性装

 

日本において異性装について言及された最古の例としては『古事記』にまで遡ることができます。

九州討伐を命じられた小碓皇子(ヤマトタケル)は、髪をおろし、女性の衣装を身にまとうことで、

警備の厳しい熊襲兄弟の宴に潜入します。自身を美しい女性と勘違いした熊襲兄弟が気をゆるした

隙をつくことで、小碓皇子は彼らを討伐しました。

 

また、まだ成人前の中性的な美しさや女性と見まがうばかりのたおやかさを備えた”美しい”男性

(若衆)も存在していました。場合によっては男色の対象となった「陰間」と呼ばれる少年や役者を

指すこともありました。

 

時代は下り、明治時代になると文明開花の名のもとに、それまでの慣習や文化、制度が革新されていきました。

このような流れの中で、新たに制定された法令の一つに違式詿違条例(いしきかいじょうれい)があります。

本条例により、異性装は禁止されてしまいます。

 

違式詿違条例は1880年公布の違警罪に継承されますが、異性装を禁ずる項目は含まれませんでした。

しかし、異性装者を差別する感情は民衆に定着していたのです。

それでも、自身の嗜好により異性装をする者、また女装芸者や髪結いなど、その嗜好を生かした職業に

就く者も存在しました。

 

それは現代においても続いており、少女歌劇や舞踏など、表現の手段の一つとして異性装が取り入れられる

舞台芸術のほか、漫画や映画などより幅広い分野において異性装のキャラクターや表現がみられるように

なりました。

 

日本における異性装の歴史を鳥瞰しながら、男らしさ、女らしさとは何なのかを考えることができる

展覧会です。

おすすめします。

 

 

 

 

会期:2022年9月3日(土)〜10月30日(日)

   前期:9月3日(土)〜10月2日(日)

      A期間:9月3日(土)〜9月19日(月・祝)

      B期間:9月21日(水)〜10月2日(日)

   後期:10月4日(火)〜10月30日(日)

      C期間:10月4日(火)〜10月16日(日)

      D期間:10月18日(火)〜10月30日(日)

主催:渋谷区立松濤美術館

開館時間:午前10時〜午後6時(毎週金曜日は午後8時まで)

    ※いずれも入館は閉館時間の30分前まで

休館日:月曜日(ただし9月19日及び10月10日は開館)、9月20日(火)、10月11日(火)