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 何がなしに       feels like

 頭のなかに崖ありて   there’s  a   cliff

 日毎に土の       in  my  head

 くづるるごとし     crumbling

             day by day     啄木「一握の砂」

  

 キーンさんは啄木を「最初の現代人」と名付けた。

 

2011年3月11日 大津波と福島のすぐあと、

 日本文学者ドナルド・キーンは

日本永住と帰化を申し出た。

「日本人を勇気付ける」ために、

鬼怒鳴門という雅号までこしらえて。

 

 三度の飯より好きだった

メトのオペラを観て、

ある日 キーンさんは書き留める。

「オペラ全体の幕が降ろされたとき・・・・聴衆は、

最初はしずまりかえっているだけだった。やがて、わ

たしがこれまでほとんど耳にしたことのないほどの猛

烈な喝采がどっとばかりに湧き起こった。それはスリ

リングで高貴な体験だった。人間であることが誇らし

く思えたほどだった。」

(プーランクの《カルメル派修道女の対話》メト初演

を観て、D.キーン『音楽の出会いとよろこび』)