前回、iPhoneとファナックの関係について紹介しましたが、当時、iPhoneの爆発的なヒットの裏で、アップルとファナック(およびその製造を担うFoxconnなどのEMS)の間では、息の詰まる攻防が繰り広げられていたそうです。


アップルはサプライチェーンに対して、圧倒的な購買力を背景に凄まじいコスト削減(買い叩き)を要求することで有名です。



「数万台規模で一括購入するから、価格を半額近くまで下げろ」という、他社なら断れないほどの巨額の取引をチラつかせた価格交渉を行いました。


また、アップルは単に機械を買うだけでなく、「自社専用のカスタム仕様にしろ」「技術情報を開示しろ」といった主導権を握るための要求も突きつけてきました。


これに対して、当時のファナック(故・稲葉清右衛門氏らの経営陣)は、アップルの要求を「1円たりとも値引きしない」という信じられない強気な姿勢で跳ね返しました。


ファナックの工作機械(ロボドリル)は、数値制御(NC)装置という「脳みそ」にあたる基幹部品を自社で100%内製しているため、世界中で圧倒的なシェアと技術的優位性を持っていました。



ファナックのロボドリル


「嫌なら他から買ってくれ。ただし、うちの機械を入れなければiPhoneの大量生産は不可能だ」という、技術への絶対的な自信が背景にありました。


前述の通り、アップル側が直接交渉で値引きを迫っても、ファナックは「既存の代理店を通せ」と一蹴。アップル専用の特別ルールを作ることを許しませんでした。


アップルの提案に乗って価格を下げ、工場をアップル専用にしてしまうと、iPhoneのブームが去った後に大きな損害が出ることを、ファナックの経営陣は完全に見抜いていました。


結果としてファナックは安売りせず、定価に近い価格でFoxconn等を通じて数万台のロボドリルを売り抜けることに成功しました。この時期、ファナックの営業利益率は驚異の40%超を記録し、製造業としてはあり得ないほどの高収益を叩き出しました。


最終的に折れたのはアップル(およびFoxconn)側でした。どれだけ価格交渉を仕掛けてもファナックがびくともしないため、iPhoneを予定通りに世界中で発売するためには、ファナックの言い値でロボドリルを爆買いするしかありませんでした。


「ファナック vs アップルの凄まじい価格交渉」の全貌は、まさに「世界最強の買い手」と「世界最強のサプライヤー」による、ビジネス史に残るプライドと戦略がぶつかり合った壮絶な心理戦でした。


あのアップルを相手に、下請けに甘んじることなく「対等以上の立場で価格をコントロールした」という点で、ファナックの交渉劇は日本のものづくり企業の伝説となっているそうです!