私は、運命と自由意思についての本質的な議論をサイババに挑まなければ、と思っていた。というより、思い詰めていた。
「スワミ、アガスティアの予言には、私の現在・過去・未来が全て書かれて……」
だがサイババは、それをさえぎって言った。
「おまえは、そうやって自分の過去や未来を知ってどうするのだ。
それが本当に自分の過去だったかどうか、おまえにはわかるまい。
本当にその未来が訪れるのかどうかは、これからの精進による。
どの道、おまえには現在しか与えられてはいないのだ」
中略
サイババは続けた。
「過去世において、おまえは由緒正しいブラーミンの家系に生まれ、不二一元のシャンカラ哲学を学んだ。
この世界が唯一で、分離不能な実存であるというこのヴェーダの根本概念におまえは魅かれ、
さまざまな慈善活動に携わったが、その一方では不道徳な生活に陥った。
だがそれでも、おまえには一筋の純粋な心が残っていた。
そして、今際のきわにおまえの唇からもれた、『真実が欲しい』というたったひと言の祈りが、
わたしの心を捉えて放さなかったのだ。
そうしてわたしは、次の生でおまえをシルディに呼んだ」
「……」
「おまえはシルディでわたしのことを文章にしたが、
短い生涯を終えるまでに、それが公の目に触れることはついになかった。
こうして、おまえが今生でわたしの物語を書物に著すことが決まったのだ」
サイババは厳しい表情をしていた。
一方の私は、サイババの口から直接語られた私自身の過去世の秘密を、ただ呆然として聞くしかなかった。
(中略)
「スワミ、それと同じことが、アガスティァの予言書に……」
サイババは、それを即座にさえぎって言った。
「アガスティアにこれらのことを教えたのは、誰なのだ。
アガスティアの祈りを聞き、その讃美を受けたのは一体誰か。
これらを教えた尊神シヴァは、今こうして、おまえの目の前に化身している」
(中略)
「ということは……ということは、われわれの運命はあらかじめ決まっているということなのでしょうか。
人間の自由意思は、どうなってしまうのでしょう」
人知を超える神秘の世界に身の程も知らず挑もうとする少年を、サイババはどう思っただろう。
このとき、おもむろに口を開いたサイババの答えは、私を驚かせるに十分だった。
「この地上に生きる者の中で、真に自由な者など一人もいない」
「……」
「自由とは、他からの独立を意味する。
他に依存し、無明の状態にあって自分は自由だと主張しても、意味がない。
欲求と欲望のとりこでいて自分は自由だと主張しても、意味はない。
完全な自由は、この地上にあってはだれにも与えられていない」
(それでは、結局私たちは……)
「おまえはまず、”自由”の意味を理解しなければならない。
自由とは、英知より生じ、真の人格から来るのだ。
束縛が少なければ少ないほど、自由は大きい。
そして、人を束縛しているのは、その欲望に過ぎない。
自由とは束縛のないことであり、欲望のない状態を指す。
それは純粋な英知から来る。
そして人は、神と一体となった時、ついに本当の自由を手に入れるのだ」
サイババといえば
謎の粉を出す
髪の毛ボーボーのおっちゃん
という認識の方もいると思いますが
青山さんの本を読んで
サイババとのやりとりに感動しっぱなしでした。
アガスティアの葉を探そうと思われる方は
ぜひ青山圭秀さんの著書を
読んでいただきたいです。
聖者アガスティア、シヴァ神、
サイババの恩恵に感謝します。