「本当?本当にクレアが来てくれるの?」
酷い……
今になって………
姉妹と3人家族
皆 独身のまま………高齢者になり
家事が負担になってきた姉妹が
老人ホームに入ると言い始め
最期まで自宅に居たいと言う君に
妹さんが言ったそうだ……
「お兄ちゃんも齢なんだから 良い人が居るなら考えたら?」
クレア………そう言われたんだよ
えっ?………
20歳で知り合って 30歳から交際を始めて
携帯の無い時代だったから 電話は呼び出し
手紙や贈り物………姉妹は
私の名前だけは? 認識していたのでしょう
君は 交際を誰にも 一切語らなかった
姉妹も友人も 私達を知る人は居ない
ただ………何十年も?見る名前……それだけ
君は 17歳歳上
家族の高齢化を案じて
介護や終活の話をしてきたのに
大らかさが災いして
全く取り合ってくれなかった
私ね………付き合い始めた時から
家族も君も 介護は私がしてあげる
そう決めていたのよ?
がんになるまでは………
「本当!本当に?クレアが来てくれるの?
家族に話すよ
……実は素敵な人が居るんだ!…て」
えっ!?
だから………私……あの………病気になってしまったから……
お姉さんの調子が悪くて
介護や財産管理の話を妹さんに急かされ
軽度の認知 パーキンソンの症状がある君……
会話が噛み合わなかったり
同じ事を繰り返したり
覚えられなかったり 忘れたり………
たらようの君 君も………不安なのね?
確信の無い不安が 理性を退ける
情緒と感情に支配されてゆく君が見える
都合の良い言葉だけ?
無意識に拾ってしまう君ナンテコト
ミカエルと出逢って 君とはお別れした
でも………別れられなかった………
君は………かけがえない美しい人
私が……護ってあげなくてはいけない
大切な人………
夢を追い続けた君
私の孤独に触れないズルさ……酷いわ
今になって
もう………君には孤独自体
見えなくなってしまったのね
「クレアが来てくれるの?!」
一度も言ってくれなかったし
私も 一度も口にしなかった言葉
「一緒に暮らそう」
君は 嘘をつかない
「愛している 君は僕の宝物」
初めて その言葉を聞いた時
涙が止まらなくなった
今 君から伝わってくるのは
その想いだけ
私の生活も 私の病も
もう………君には見えないのね?