患者会の先輩は 御高齢で独居
高度成長時代 寝る間も惜しんだ企業戦士
身分違い(家柄違い)の恋を 情熱で叶え
反対された妻の両親から駆け落ち同然
一間の部屋から始まった貧乏暮しなれど
必ず!あなたの娘さんを幸せにしてみせる!
そう断言したから 死にもの狂い
上場企業の重役に駆け上がり
社長に肩を並べ
一代で財を築き
地位と名誉も手に入れて
妻の両親に 婿だと認めさせ 息子になった
若き日
自分を信じて 家を捨てたも同然の妻には
彼女が望めば 何でも与えられる自分になり
二人で世界も旅をした
先輩はとてもおしゃれでセンスが良い
ハンサムで背が高く モテモテ?だったろう(笑)
奥様がその情熱に 親を捨てる恋に落ちたのだ
そう感じたけれど………
先輩の衣装は全て
奥様のセンス 見立てだと知って感服した
生まれに育ちの良さもあってか?
自然 一流を身につけ目利きであったのだ
物も 人も(笑)
原石の先輩を磨いたのは………実は?
当時女子大生であった奥様
先輩が大腸がんになって
手術が決まり
入院前夜 その支度をしながら
「私………なんだか しんどいの………」
「そうか? 早く寝ろよ」
これが 最期の会話だったそう………
奥様は 心筋梗塞で急死
先輩には子供がいなくて
大きな屋敷に 独りになって帰宅した
そんな こんな話を 私にしたのは
先輩が 私に好意を持たれたから
親子ほど 歳が離れているのに?
自転車で通える距離で 方向も一緒
患者会散開後は いつも一緒に帰った
高齢で 独居………
こんな そんな事情を知る内に
先輩を気にかけ 困った時 何かあれば
私に出来る事なら
手助け お手伝いしたい しますからね?
患者会の後輩 ご近所さん………
そんな気持で接してきて5年
勿論 個人的な付き合いは無く
患者会の参集 散開の折々
お茶したり 食事したりの近況報告は
私達における生存確認
暑い日 寒い日 案じて電話やメールもした
先日 先輩に言われた
「あのな………もう 言葉は要らない」
?・・・・・
先輩は私を 女として見ていて
余生を共に生活したいと望んでいらした
うかつ………と言うのだろうか?
そんな事 夢にも………思ったけれど!
変だな?とは 感じたけれど まさか本気で?
信じ難く 信じられず
父を慕い 案ずる気持で接してきた
自分を恥じ 申し訳なく
けれどとんでもなく失望し 悲しくなった
どんなに 誠心誠意
真心から接したとしても?
それは己の気持であって
相手の願いでない事を
知っていたはずなのに
高齢だから………と案ずる気持が
相手を侮る不敬になったのだ
まさか!そんな!
話せばわかる 通じる………なんて気持で
亡き妻のように 自分を愛し
気遣ってくれる女性を必要としているのに?
なんて酷い 恩着せがましい押し売りか……
ご飯が食べたいのに
パンを与えられても喜べはしない
先輩は もう良い……… 度々こぼし
空を見上げていらした
奥様の元へ行きたい……と