勤務医時代、「混合診療」という名前は知ってはいたが、その内容はよく理解していなかった。
混合診療の問題を明らかに知ったのは漫画だった。
「ブラックジャックによろしく」
この漫画で混合診療の問題が扱われていた。これを読んではじめて、混合診療に関心をもったのだ。この漫画はスーパー医師ものではなく、医療問題提起漫画です。医療の矛盾を、一人の研修医がひっかきまわすような話です。この研修医はあちこちの医師から嫌われますが、読者はこの研修医の思考こそが普通であると思い、みんな応援するのです。
抗がん剤治療の話がとりあげられていた。保険適応がなされていない治療薬を使うとき、入院費から含めてすべての医療費が自費になるというのだ。入院は保険適応なのだから保険を使って、その薬だけを自費ですればいいだろう。多くの医師はそう思うことだろう。普通の感覚ではそうなのだ。それがダメなところが、なかなか直感的には理解しづらい。
なぜ混合診療が認められないかというと、患者の負担が大きくなるからであろう。保険で治療できる範囲をどんどん狭めて、みんな保険適応外の自費診療にしようとするはずである。こうなると、いろいろな治療がみんな自費治療になっていく。
現在、アレグラなどスギ花粉症の薬や、漢方薬、湿布剤などを保険からはずそうとする動きがある。医療費削減のために、間違いなくそうしてくる。今までは医療保険で安く受けられていた人が、今後は保険が効かない高い治療を受けることになる。国民の使う医療費はおさえられるが、国民の薬代などの負担はすごく高くなる。