他の人の意見を聞いていて、昔のことを思い出しました。コロナの初期に何が起こっていたか。
2020年、コロナが日本に広がりだすと、コロナで重症化する人がどんどん増えてきました。その中でも、コロナの患者の命を救うのだと頑張って診ていた病院もいくつもありました。
いわゆるコロナ病院で患者を受け入れるために何が問題になったのかというと、スタッフ不足です。特に看護師が不足する。重症化した人の管理はすごく難しいので、看護師資格があればいいというわけではないのです。高度な知識と経験が必要になります。その看護師たちは次々とコロナ病院をやめていってしまった。当然、その病院はコロナの患者を救えなくなります。
コロナ病院をやめた看護師は、やめたくてやめたわけではないのです。自分が仕事を続けていることで、多くの人命を救えることはわかっています。できれば続けたい。でもやめなければならない理由がいくらでもあったのです。
まずは、風評被害。看護師の多くは女性ですから、夫と一緒に生活しています。その夫が会社で言われるのです。「奥さんがコロナ病院に勤めているそうですね。コロナをうつされると困るからすぐにその病院をやめさせたほうがいい。」夫から圧力がかかります。
もっとひどいケースは、看護師の子供がいじめにあうのです。学校の中で、「母親がコロナ病院で働いているから、コロナうつされる。近づくな。」と。自分の子供が、母親が原因でいじめにあうのは耐えられないのです。また、保育園が小さな子供を預かってくれなくなります。コロナ病院に働いている親の子供はあずかれない。保育園に子供の預かりを拒否されます。これでは仕事は続けられません。
こんなことが全国あちこちで起こりました。このため、泣く泣くコロナ病院をやめて、別のところにうつっていく。「コロナで忙しくて大変ですね。尊敬しています。」とニコニコ言われながら、見えないところでたたきまくる。誹謗中傷もそんな感じも多いのでしょう。
看護師がいないから、コロナ患者を受け入れられない。初期の頃にはかなり言われていました。このため、コロナ病棟以外から、職員をよせあつめて、不慣れな診療をさせたわけです。
コロナの患者を診ている人たちの足をひっぱらないでほしい。尊敬などいらないから、邪魔だけはしないでほしい。
医療者に感謝をとブルーインパルスとばしたことがありましたが、そんな感謝はいらないから、コロナ診療がまっとうできるように、邪魔しないでほしい。これが当時の人たちの思いだったでしょう。邪魔なんていくらでもありましたからね。
うちはクリニックで、かなり初期からコロナ患者を診てきました。誹謗中傷はありましたよ。「あそこのクリニックに近づくとコロナうつされるから、行ってはならない」と陰で言われていました。このため、受診する患者は7割減りましたね。「うちはコロナは診ない。よそに行け。」と言い続けていたところは、そんなに患者減らなかったのでしょうけど。
医者として、医療者として必要なのは、病気の人を診ることです。コロナの患者を診ることで、患者が減ったとしても、そこに後悔はありません。コロナも診ないで収入が多いと言う様な医師を軽蔑します。世の中からはそんな医師のほうが尊敬されてたりはしますけどね。でも、コロナを診ない医療機関が絶賛されるのであれば、誰もコロナなど診なくなりますよ。コロナにかかったときに困るんじゃないですか。
医療者がコロナ患者を安心して診られるように協力をしてほしいのです。だからこそ、誹謗中傷には腹が立ちます。忽那先生がんばれ。