医者の仕事は薬を売ることではない | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

医者の仕事は薬を売ることではない。

患者を診断し、治すことである。

治すためにどうするかを考え、必要であれば薬をだす。

 

医者の仕事の8割は診断だと思っている。その診断こそ重要である。

 

ところが、「薬さえくれればいいんだ」と主張する患者があとをたたない。その薬はどうするのかといえば、患者が希望の薬を選ぶのだ。その薬ではよくなりませんよと言うことがたびたびあるが、納得してくれない患者も多い。「自分の希望する薬さえだせばいいんだ。」と好き勝手なことを言ってくる。僕自身はおれることがないので、的確な薬や治療に切り替える。おれてしまい、相手の言うとおりに薬をだす医師は、治せないということになるだろう。

 

患者の言うとおりにしないから、当院では病気がよくなる。患者の言うとおりにしないから、患者はいかりはじめる。

 

多くの医者は、患者の言うとおりに薬をだすから、患者は喜ぶが病気が治らないと言う結果になる。医者は心の中で思っている。たとえ治らなくてもそれは患者が悪いんだ。治らない治療で患者が大喜びならば、こちらの評価も高くなるから、治らなくてもいいか。

 

風邪のあと咳が2週間とまらないという患者がくる。

本人の希望は、「咳止めがほしい」なのである。

2週間咳が止まらない人に、咳止めだしても効かない。

自分はそう思うのだが、患者の希望は「咳止めがほしい」になるのだ。

「咳をとめてほしい」ならば治療はやさしいのだが、「咳止めをほしい」という言い方になると、治らない咳止めをださざるをえなくなる。

 

薬を飲めば治るんだと思う患者が多いのは、薬依存の治療をし続けてきた結果なのだろう。咳止め飲んで治らないのに、咳止めがほしいと言う理由がよくわからない。効かない薬をもっとほしいと言うのだから。