これも昔、若い時の話である。たぶん、研修医時代。
頭痛と鼻汁で夜間に受診してきた患者がいた。当直担当の研修医が風邪と診断し、風邪薬をだして帰した。翌日、頭痛が続くので脳外科を受診。そこでクモ膜下出血がわかったそうだ。軽いクモ膜下出血。ただ、大きな出血になれば、いつ命を落としても不思議ではない状態。
当時の脳外科部長が教えてくれた。
昨晩、頭痛で救急外来を受診してきた患者。脳CTをとったら、軽いクモ膜下出血だった。こんな軽い頭痛で、他の風邪症状もともなっていれば、誰でも見逃す。自分もたぶん見逃す。だから、研修医の見逃しはせめられない。ただ、こういう軽い症状の中にも怖い病気が隠れている。
そのようなことを指導者として、若い医師に教えてくれた。
すべての病気を見つけられるわけではない。ベテランの医師でも同じである。医療に完璧はない。マスコミは医療ミスだとたたこうとするが、そんなに簡単なものではない。病院で働く医師は十分に承知している。それでも一人でもそのような患者をださないために、細心の注意を払わなければならない。
初期の段階で病気の診断がつけば、その人の症状がどう変化していくかは予測ができる。経験がないとその予測は難しいかもしれないが、それでも何度も受診してくれば、気づくチャンスはある。気づいたときに、適切に対応しなければならない。