風邪でのどが赤くなると信じている人は、勘違い | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

すごく大切なことなんですけど、ほとんどの人が知らないので書きます。

 

風邪をひいて、受診します。

「のどが赤いから風邪ですね」と医者は言います。

これが大ウソつきなのです。

 

実はのどを見る前に、症状から風邪と診断していることがほとんどだと思います。風邪がウイルス感染ならば、多くの場合には赤くなりません。だから、「のどが赤くないです」という医者は事実をありのままに言っているわけです。

 

風邪の場合、のどが赤くなる場合も、赤くならない場合もあります。ですから、赤いかどうかは判断基準にはなりません。ほとんどの場合、症状を聞いて、風邪と診断しています。のどを見ることは、風邪の診断にはあまり意味がないのです。

 

僕も「のどが赤くないです」と普通に言います。そうすると必ず患者さんからクレームがきます。

「風邪だと思って受診したのに、先生は風邪ではないと言うわけですね。」という感じです。風邪じゃないなんて言っていないのです。赤くないと言っているわけです。このやりとりで、5~10分時間を無駄にします。面倒くさくなると、赤かろうが、赤くなかろうが、「全部赤い」と言っておけば、診察はスムーズなのです。ベテランの医師は、風邪だろうと思ったら、「のどは赤いです」とウソをつくと思います。そうすると、診察が早く終わるので。その結果、風邪のときはのどは常に赤くなるのだと患者が思い込むわけです。

 

僕なんかはのどの粘膜がかなり赤くなっているときには、風邪以外の病気を疑います。一番典型的なのは細菌感染です。溶連菌なんかは最たるものですね。このような細菌感染があると、のどの粘膜が真っ赤になります。この場合には、風邪ではなく、細菌感染の可能性が高いのです。だから、「のどが赤いので風邪ではないですね」というのが正解になります。このような場合には、抗生剤をだします。風邪に抗生剤をだしているのではなく、風邪のような細菌感染に抗生剤をだすのです。もちろん、患者には、細菌感染のようだから抗生剤をだしますと説明しています。

 

もう一つのどがすごく赤くなる病気があります。それがコロナです。コロナの人がみんな赤くなるわけではないのですが、ひどい赤みがある人の場合には、まずコロナを考えます。のどの炎症がひどくなり、強い痛みを訴えます。

 

のどの粘膜所見(色など)で、診断に結ぶつけることはよくありますが、一概にどっちだと決めつけられるわけでもないです。風邪の場合、赤くなる場合もあるし、赤くならない場合もあります。

 

のどが赤くないと言ってしまう医者は、単なる馬鹿正直ものです。決して診断しているわけではないのです。

 

たとえば、熱をはかりますね。そのとき、「36.5度です。熱はありませんね。」と言っているようなものです。熱がないから風邪ではないとは一言も言っていません。風邪でも熱がでない人がいることはみんな知っているからトラブルにはなりません。ところが、風邪の人にのどが赤くないと言うと、必ずトラブルになります。全員が、「風邪はのどが赤くなるものだ」と思い込まされているからです。

 

こういうのって、いっぱいあります。インフルにかかったら、インフル検査で陽性になる。こんなのも思い込みです。実際には陰性になってしまう人もけっこういます。これはコロナも同じですね。

 

のどが赤いから風邪だと言いまくっている医師は、かなりベテランの嘘つき医師か、風邪のことを何もわかっていないバカ医師かのどっちかでしょう。