リスクゼロ思考の人たち | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

医師のネット掲示板に書いてあったのですが、最近、「リスクゼロを求める人が増えてきて、やりづらくてしかたない」というのです。当院にもゼロ思考の人がかなりいます。

 

「この治療をしたら、絶対に治るんですか?副作用がでないという可能性はゼロですか?」とのような質問がきます。

 

100%治るとか、100%副作用がでないとは言えないのです。まともな医師ならばいいません。嘘つき医師は別にして。

 

このような説明の人がくると、多くの医師は、治療をしたくはなくなりますね。

 

このまえ、ピルの話を書きました。ピルを飲めば血栓症の副作用がでてくるリスクは誰にでもあるのです。血栓症を起こしやすい人の場合には、リスクが高いのでピルをだしません。もしくは、仮に出したとしても、血栓症が起こったかもしれないと思えば、すぐに検査して最悪にそなえます。

 

訴訟になったのは、疑う症状があったにもかかわらず、何の対応をしなかったので問題になったのです。血栓症がでてくるリスクがあるのはしかたないのです。

 

薬の副作用はでると困る。そう思う人は、薬を飲まないことが唯一の方法です。患者は「絶対に大丈夫ですよ」という言葉を医師に求めますが、大ウソつきの医師でないかぎりは、そんなことは言いません。リスクの高い低いは説明して、薬をのむかどうかは自分の決断です。自分で治療を選択し、決断できないのは、日本人の特性です。昔は医師に全部決めさせるということが行われていましたが、患者の権利意識がが高まり、今はリスクの説明をして、治療を受けるかどうかを決めるのは各個人だと言うことになりました。胃がんに手術をしないという選択をしてもいいのです。ただ、手術をしない場合には、手術の合併症はなくなりますが、病気の進展で命を落とすリスクは高くなります。それを考えて、治療をうけるかどうか、自分で選択しなければならないのが、今の医療の在り方です。100%大丈夫な薬はありません。