ろう者の米内山(よないやま)明宏氏はすごかった | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

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以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

昨年、ろう者の米内山明宏氏がお亡くなりになった。ろう者のオピニオンリーダーであり、現在の聾者に多大な影響を与えた人である。

 

 

美術に恩恵が深く、手話狂言をはじめ、日本ろう者劇団の代表になり、米国に留学し、日本では手話の普及に努めた。

 

僕自身、米内山氏と直接話したことはなかったと思うけど、手話による講演、演劇などは何度も見させてもらった。非常にわかりやすく、面白く、ろう者に人気があるのも非常にうなづける人であった。

 

彼は、日本語を話さない。日本語を話さないのは、ろう者としてのプライドがあるからだ。自分の母語は手話であり、手話でならば自由に会話ができる。それにプライドをもっているので、あえて日本語を話さない。

 

日本では自分の障害を克服したと言われる人が、絶賛される。つまり、米内山氏は、まったく評価されないと思う。聞こえないことを克服していないからだ。

 

乙武さんの歩く姿がテレビでとりあげられて、大絶賛される。このように歩いたからといって、車いすを使わないことはありえないのにだ。つまり、障害を克服したと思われる映像が、世の中に受けるからだ。

 

車イステニスの元チャンピオン、国枝さんはその実力を日本でほとんど評価されていなかった。テニスはうまいが、障害を克服していないからであろう。世界の人たちが絶賛し、日本はあわてて国民栄誉賞を授与したということなのだ。

 

車イステニスで世界チャンピオンになるよりも、自分の足で少し歩けたということを絶賛するのが日本人なのだ。

 

米内山氏の業績はすごい。しかし、日本では一部にしか評価されていない。障害を克服することをまったくしなかったからだ。聞こえないことを乗り越えなかったからだ。日本の文化人として、生存時には人間国宝に指定してもおかしくなうような業績なのに。国益に合致しないと言うことなのだろう。