気管挿管が長くなると気管切開 | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

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以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

 

 

一時的に呼吸不全を改善するためには、気管挿管というのを行う。口から気管まで管をいれて、呼吸をサポートするためだ。

 

改善が早ければすぐに抜く場合もある。1週間以上挿管が長引くようだと、首の前に穴をあける気管切開というのを行い、口の管を、首のほうに入れなおす手術を行う。

 

内科の医師に頼まれて、耳鼻科医や外科医が気管切開手術をすることが多い。ただ、患者の同意を得られていないと、こちらも手術をするわけにはいかない。

 

この場合には、患者の同意を得られず、医者と患者の間でかなりのいざこざがあったのであろう。でも、人工呼吸器をとめるという選択肢はない。また、挿管したうえで人工吸気をとめてしまえば、空気が入ってくる道がふさがれるので、呼吸状態と関係なく苦しいはずだが。もし、呼吸状態の改善を確認するとするならば、それは人工呼吸器をとめるのではなく、接続部分を外してみるということだろう。数十秒もはずせば呼吸状態に問題がないかどうかはすぐにわかる。2分間の呼吸停止はかなりの負担になるはずだ。

 

気管切開する理由は次のようなものだ。長期に声帯のところに管が入りっぱなしになると、後々声のかすれなどの合併症がでる可能性がある。管の中に痰がつまりやすい状態になっており、それをとるのは、口からの挿管の場合には非常に難しくなってくる。気管挿管すると管が非常に短くなり、またつまった場合の交換も容易にできる。

 

もちろん、患者のために、治療の一環としてするものである。がんの手術と同じで、手術を希望しない人に無理やりすすめるものではない。気管切開する理由を説明しても、理解できない人もいるだろうから、それはそのままにしておけばいいと思う。下手に正義感が強いと、患者のために何とかしようとする意識が強すぎて、強引にもっていこうとしてしまったのであろう。

 

いずれにせよ、対応には問題がある。患者のキャラクターも考えて、無理にやるべきものではないと思うが。