10日前から鼻汁がでる妊婦 | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

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以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

10日前から鼻汁がでるという妊婦が発熱外来に受診してきた。「今、熱がないのに何で発熱外来に来たの?」と聞いてみた。その人は10日前に鼻汁がではじめ、熱はなかったんだけど発熱外来受診し、コロナの検査をして陰性だったそうだ。それからずっと鼻汁がとまらなかったらしい。どこの医療機関に電話しても、発熱外来はいっぱいだからと断られて診てもらえないらしい。

 

ここまで書いて、なぜこの人は断られたのか、気づく人は医者ぐらいかもしれない。コロナなどまったく関係ない。妊娠しているから、受診してくるなと追い払われているのだ。

 

何年か前に、妊婦さんをみると診療報酬上加算がつくようになった。つまり、診察料を高くとれるようにしたのだ。なぜそうしたのか。それは妊婦さんの診察があちこちで断られるからだ。断るほうがどうかと思うが、診察料を高くしてあげれば、断らなくなるだろう。これが国の考え方である。しかし、このことが知れ渡ると、政治家たちが批判しはじめた。「妊婦を差別しているのか。なんで妊娠していると、診察料が高くなるんだ。」というわけだ。正論である。このため、妊婦への加算は、6か月でなくなった。

 

また、妊婦さんの診察が断られるケースが続出するこになったろう。ただし、妊娠しているからという理由では断れない。「発熱外来はいっぱいだから」と断るのである。そもそも発熱していないし、コロナの検査も最初に受けて陰性だし、10日もたっているからコロナであっても感染力はないし。診ない理由はまったくない。当の本人はコロナかもしれないと思って、当院の発熱外来を受診してきたのだろう。

 

妊娠を理由では断りづらいので、他の理由を何か探してくる。予約がいっぱいだというのもよくある手段である。本音で理由を言って断ると、あとあと問題なので、いかにもこちらは落ち度がないんだというような体で断る。だから、患者もひどい仕打ちを受けていることに気づかない。

 

当院の発熱外来受診して何をしたか。コロナの検査はしません。鼻水を抑える薬をだして終わりです。主訴は鼻水がとまらないだから。10日我慢しなくてもすぐにくればいいだろう。そう思ったのですが、本人が言うのには、受診できるかと聞くと、断られてしまうというのです。

 

僕のポリシーです。とにかく一度受診してほしい。自分の手に負えない病気は他に紹介したりして、自分がなんとかします。最後はゴールまでもっていきます。