仙台から東京にもどってきてまもなくだった。東京の駅の前でタクシーに乗った。女性ドライバーで、運転席の裏に自分の自己紹介が書いてある変わったタクシーだった。そこには、、、、
「出身は仙台市です。」
と書いてあるのが目にとまった。
「僕も最近仙台から東京にもどってきたのです。医師をしています。」
というような雑談をしていると、そのドライバーは言った。
「私も仙台の病院に一回入院したことがあって、そのときの主治医の先生には本当によくしてもらいました。」
なにげなく、入院した経験を言い始めたのだ。
「実はその先生、最近お亡くなりになったそうなのです。」
「それは〇〇先生ではないですか?」
自分の一学年上の先生の名前をだした。まさしく、その先生だった。同じ大学の先生から、突然死したことを聞いていたのだ。
学生時代にお世話になった。自分の一学年上。飲みに連れて行ってもらったりしたものだった。その先生を知る人が100人いれば、100人みんなが気に入るような先生だった。
卒業後は、診療科も違うので、ときどき病院で顔をあわせるぐらいであった。卒業後は医師としてどうしているかは、あまりよく知らなかった。
見知らぬタクシードライバーから、その先生のことを聞いたのだ。
「あんなにいい先生はいない。」
そりゃそうです。すごくいい人でしたから。
やはり、すばらしい医者になっていたのだと改めて知ることができた。30歳すぎぐらいで突然死してしまった。そんな先生に少しでも近づけたらなといつも思う。どうがんばっても、かなわないが。
その先生のことを思い浮かべると、いつも涙ぐんでしまう。