医者嫌いに患者もけっこういる。普通の医者嫌いではない。すごい医者嫌いである。医者にかかりたくはないので、そのような患者は家族に抑えられて受診してくる。本人は来たくないのに、家族に無理やり連れてこられるのだ。
100歳の老婆。自分が診察した最高年齢だったと思う。転倒して腕を骨折してやってきた。レントゲン写真をとると、腕の骨が見事に骨折し、完全にずれている。本人にレントゲン写真をみせて説明しても、とにかく本人は帰りたいと言う。骨折の整復は、整形外科の医師にまかせてしまったので、自分はここまで。
次は、60歳ぐらいの男性。腹痛があり、自分で鎮痛剤を飲んだ。痛み止めの薬を飲んでも痛みはよくならない。次々と痛み止めの薬を飲み、腹痛がひどくなって救急病院に救急車でやってきた。痛みがひどくてのたうちまわっている。すぐに緊急内視鏡になった。大きな胃潰瘍があったそうだ。入院して点滴、絶食。ところが、自ら点滴をひっこぬき、家に帰ると病棟で暴れまわる。看護師さんもどうしようもなくなり、真夜中に緊急退院になった。その翌日、自宅で吐血し、亡くなったそうだ。たかが、胃潰瘍。治療をすれば簡単に治る病気なのに。
極度の医者嫌いは、医者としては困ったものだが。それもしかたないのかもしれない。