聴検室の換気扇は、低音低下につながる | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

夏の暑い時期、聴検室は熱がこもりやすいので、大変です。聴検室を涼しくしようとしてなのか、換気扇をまわしっぱなしにして、聴力検査を行うところがあるようです。換気扇をまわすと、それが聴検の低音の音とかぶさり、低音の聞こえが悪くなります。このため、低音が落ちて、低音障害型感音性難聴だと誤診されます。

 

当院を受診した患者がそんな感じでした。聞こえが悪いと受診し、聴力検査を行いましたが、正常です。

 

過去にも聞こえが悪いと近くの耳鼻科で聴力検査を受けたようですそのときに、低音が落ちていると言われたとか。ただ、その患者が言っていたのは、周囲の音がうるさくて、低音がよく聞こえなかったと。そうなると、低音が落ちて、低音障害型感音性難聴と診断されます。内服薬がでたそうです。

 

当院での聴力検査では異常がありません。低音はよく聞こえています。聞こえが悪いと受診しましたが、聴力検査では異常なしです。あたためて、何が聞こえないかを確認しました。ときおり、人の話が聞こえなくなるそうです。この話から、聴覚情報処理障害(APD)であることを確信しました。聞こえが悪いと訴えているのに、聴力検査正常。これがポイントです。

 

医者のほうでは、「聞こえが悪い」という主訴にとらわれてしまい、低音が落ちていると、それが原因だと思い込んでしまうのでしょう。聴力検査を正確にすることが、正しい診断には何よりも重要です。

 

耳鼻科も開業医となると、聴力検査がうまくいっているかどうかを確認するのは、耳鼻科医である自分しかいません。普段の診察のときの結果から、正しく聴検ができているかの確認もしなければならないのです。その確認は簡単です。仕事しているスタッフに聴力検査を受けてもらえばいいのです。低音が低くでるようなら、その検査には問題があるのです。聞こえが悪いと受診した患者の聴検をすると、悪くて当たり前と思ってしまうので、見逃してしまうのです。