「壊れた脳と生きる」 | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

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以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

「壊れた脳と生きる」

高次脳機能障害「名もなき苦しみ」の理解と支援

鈴木大介/鈴木匡子著

ちくまフリマー新書

 

高次脳機能障害。脳卒中などにより脳が障害を受け、そのために高度の脳機能の働きができなくなる障害である。手足が麻痺するような障害ではないので、その異常に気づかない人も多い。ただ、なんか頭がうまくまわらないような症状だけの場合もあるそうだ。

 

高次脳機能障害の当事者、鈴木大介氏と、高次脳機能障害を専門とする東北大教授の対談の記録である。

 

鈴木大介氏の本はこれが3冊め。何度読んでも高次脳機能障害はなかなかわからない。

 

鈴木匡子教授は、自分の出身大学の教授。自分が大学にいたころは若手の研究者だったような記憶があるが、今は大学教授に出世している。

 

高次脳機能障害は、脳の処理速度が遅くなり、言葉の聞き取りなどにもかなり影響があるそうだ。ここらへんは、発達障害、APD(聴覚情報処理障害)、認知症などにもかなり共通している。これらの疾患は、脳のネットワーク処理の遅延によって起こっているような気がする。高次脳機能障害は後天的なもの。このため、今までできたことが突然できなくなる。リハビリを行い、ある程度まではゆっくり回復してくる。できていたことができなくなるというショックが大きいのだが、何ができないのか、それを自分で表現できる人はまれなそうだ。

 

自分自身が高次脳機能障害に気づいていないことも多く、医師も気づかなことが多い。理解されるまでには、かなり時間を要することも多いようである。「見えない障害」の一つである。