ウイルスはとまらない、帰省はとまらない | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

インフルエンザには、熱があまりでない人も多い。

 

インフルエンザの教科書などには、38度以上の熱とはっきり書いてある。これを根拠に、37.5度だからインフルエンザではありませんと熱の値だけで否定する医者がたくさんいた。

 

それに対して、37度台のインフルエンザはたくさんいると、迅速検査の結果をもとに5~6年前から言い続けてきた。当初は、そんなことないだろうと思っている医者が多かったが、自分と同じように微熱のインフルエンザの存在を指摘する医師もでてきて、「軽症インフルエンザ」という取り扱いが普通になってきた。これが認められるまで数年かかった。

 

今度は軽症のインフルエンザは人にうつさないのだから、そんなの見つける必要性がないのだと主張する医師がでてきた。うつさないという根拠はどうなのかわからない。他の人にうつしづらいことは正しいとは思うが、まったくうつさないわけでもないだろう。コロナと同じように、密な接触ではうつすことだろう。軽症のインフルエンザをほおっておいてもかまわないという理由にはならない。

 

高熱がでても、インフル迅速検査で陰性になる人はいる。そのような人に仕事を休むように言っても、無視されるのがほとんどである。検査で陰性なのに、インフルだといいはる医者は頭がおかしいとでも思っているのだろう。そんな場合、こっちも意地になるので、翌日の再検査を指示する。するとけっこうな頻度で二回目には陽性になる人がいる。インフル迅速検査の陽性率は80%ぐらいであろうか。

 

実は、コロナはもっと低く、70%ぐらいである。検査で陰性になる人が30%も存在する。この陰性の結果をもとに、帰省しようとする人があとをあたない。3人に一人は検査陰性のコロナなのだが、そのような人に帰省をやめろと言っても聞くわけはない。最初から帰省しない人たちで有れば、わざわざ検査を受けないからだ。どうしても、帰省をしたい人たちが、アリバイ的に検査をしているのだ。年末に何がおこるかといえば、日本津々浦々にウイルスが広がることであろう。

 

もちろん、検査をしないよりはしたほうがいいが、検査ですべてのコロナを指摘できない限り、帰省をしないという選択肢が一番である。どうしても帰省をしなければならない場合には、自宅にこもってじっとしていてもらうほうがいい。

 

あそこの息子が久しぶりに帰ってきたんだって。久しぶりにあって、一緒に酒を飲もう。

 

ここでウイルスが広まるのは目に見えている。

 

そこででてくる言葉は、

「あいつは悪いやつじゃない。根っからいいやつだ。俺は小さいころから、あいつのことはよく知っているんだ。」

 

帰省前に検査をすればするほど、安心しきってウイルスが広がる。むしろ、東京からウイルスもって帰ってきたかもしれないから、怖いから会わないというほうがいいのかもしれない。