APDの本を出したわけ | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

聴覚情報処理障害(APD)の本は、自分の原稿持ち込みです。この内容で本を発行してほしいのだけど、どうでしょうか。出版社にお願いしてだしてもらいました。本を出したいと思った理由は次のようなことです。

 

1)多くの人にAPDを知ってもらうため

 北海道などの遠方から、東京の当院まで受診してくる人があとをたちません。APDについて診察してもらえるところが本当にないからです。どこか診察してくれるところを教えてほしいというメールは、受診患者以上に多いのです。APDの解説書を書いたら、受診しなくても自分がAPDかどうかがわかる。治療ができるものではないので、今後どうしたらいいかのアドバイスを書いたら、それで解決するだろう。

 

2)耳鼻科医を啓発するため

「耳が聞こえない」と近場の耳鼻科を訪ねても、「聴力に異常がない」と言われて終わりになってしまいます。APDという疾患があることさえ、周知できればこのような言い方にはならないはずです。大学教授が話をするのならともかく、開業医である自分がどんなに言ったって、APDのことについて、理解してもらうことはできません。そこで患者さんを使って、耳鼻科医に働きかけることにしたのです。この本を読んだ患者さんは、耳鼻科を受診するときに、「APDかどうか調べてほしい」と行くようになるでしょう。こう言われてしまえば、APDがなんであるか知っていなければ、その患者をむげにできないはずです。半分は政略的な目的なのです。もちろん、耳鼻科医にもこの本を読んでもらえば、APDとはどんな状態なのかを容易に理解できるような内容になっています。

 

3)そして発達障害に関わる人たちも啓発したい

 発達障害を診察している精神科医、小児科医にも、APDの患者さんがこのような悩みを抱えていることを知ってもらいたいのです。発達障害の場合、半分ぐらいはAPDを合併しているからです。APDの理解なく、発達障害の診察は難しいでしょう。そして、学校など教育を通じて発達障害の子どもに関わる人たちにも、どのように対応するべきかを本を通じて学んでほしいと思っています。