医者がよくある質問に、「学生のころから耳鼻科を専攻していたのですか?」というものがあります。けっこう誤解されているんですよね。
どの医者も、医学部を卒業するまでは(医師国家試験を受けるまでは)まったく同じ教育をうけます。その勉強の多くは内科分野です。皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、泌尿器科、精神科などの分野はマイナーとよばれており、医学部の中でも勉強はしますが、その勉強時間は極端に短いのです。医師国家試験までは全医学生がすべての科目を勉強しますが、医師国家試験に多く出される内科の分野が圧倒的に多いのです。このため、内科の範囲の勉強ばかりをしています。
医師国家試験に合格し、各専門ごとにわかれた勉強にうつります。僕らの時代は、直接耳鼻科の大学医局に入り、耳鼻科一本で勉強しました(現在は研修制度がかわったので、事情が少し違いますが、その制度についてはここでは省きます)。つまり耳鼻科医は医者になってから、耳鼻科しか勉強しない人がほとんどなのです。とは言っても、学生時代に学んだ知識がありますから、しばらくは他の病気も対応できます。耳鼻科医としての年数を経れば減るほど、他の科の病気についての知識がどんどん失われて行きます。つまり、若い耳鼻科医のほうが、他の病気のことが詳しいのです。これは耳鼻科に限らず、他のマイナー系の医者はみんな共通です。
では、内科の医者はどうかというと、学生のころからマイナー系の勉強をしない人がほとんどなので、医者になる前も、医者になった後もマイナー系診療科目の知識がない人がほとんどです。