障害者の優先は絶対なのか? | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

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以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

当院では廊下にも待合のイスを出している。当院が始まる前には、廊下にイスを置き、そこに座って待っていてもらう。お年寄りや、小さな子供を連れてきた人などは楽であろう。

 

下の写真をみてもらうとわかるが、視覚障害者のバリアフリーのために、ハートビル法という法律が制定されている。詳細は省くが、視覚障害者が入ってこれるようにビルの中、当院の入り口まで点字ブロックが敷かれている。障害者のバリアフリーが実現するのはいいことである。

 

しかし、これがまた大きな障害を引き起こす。はっきり言って当院には視覚障害者は週に1~2人しか受診しない。しかし、ベビーカー押してくる人は山のように来る。この点字ブロックにベビーカーの車輪をとられて、当院にうまく入ってこれない人たちが毎日かなりいるのだ。バリアフリーのシステムが、別の人たちにバリアを作りあげる。

 

日本においては、ベビーカーを押す人たちや、高齢者は障害者とは認められていないため、法律上は障害者優先で、それ以外の人たちはあとまわしにされるのである。もちろん、ベビーカーを動かすのにはとても苦労するが、入れることは不可能ではない。視覚障害者にとっては、院内に入ることすらできないのだから、どっちが優先かは明らかだろうという考えも理解できる。

 

この点字ブロックの脇、当院の壁との間に、待合用のイスをだしている。ここに待っている人たちが座っている。先日、視覚障害者がクレームをつけてきた。「外にイスを並べるから、点字ブロックを歩くときに邪魔だ。イスを外にだすな。」というものである。もちろん、点字ブロックの上にイスを置いてはいない。しかし、そこに座ると足が点字ブロックの上に投げ出されるような形でみな座っている。視覚障害者が点字ブロックの上を歩きづらいのは事実であろう。

 

しかし、そのようなときには「通りますよ」とでも言って声をかければ、座っている人も足をひっこめるなり対応してくれるはずである。本来、障害者も、障害のない人も、お互いに譲り合いの気持ちをもつことが大切なのだと思う。それがいきなり、「イスを外に置くな」というのはどうかとも思う。足が悪い人も、疲れている人もいる。クリニックに来る人たちなのだから、立っていることも大変であろう。そのような人たちへの配慮はできないのだろうか。障害者だけが大変なわけではない。病人にとっては、自分も障害者と同等に配慮されるべきであろう。障害者だけ優先というのもおかしい。そこはどちらにも、適時配慮をしていくべきである。