自民党と日本医師会 | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

日本医師会が、自民党とともに強くなったことは言うまでも無い。日本医師会とは、主に開業医を中心にした医師団体である。日本最大の医師団体だ。保険診療制度がまだ十分でなかった時代から、自民党にすりよることで、保険診療で利益がでるような政策を次々と実行してもらっていた。まずはなぜ日本医師会が強かったのかとうことから話させてもらう。

 

自民党を強力にバックアップしている団体はいくつもある。農業協同組合(いわゆる農協)、そして経済の中核をになく経団連、最後に日本医師会である。日本医師会らは自民党にとっての大きな票田団体だったのである。

 

自民党から出馬する医系議員が立候補する。日本医師会の代表のようなものだ。それを票でバックアップする。その投票数を背景に、国政に大きな発言力をもたせ、医療機関に有利な法案を通していく。まあ、他の団体でも似たことはいくらでもやっている。

 

クリニックに議員のポスターがはられる。医者が患者から尊敬されていた時代には、そこをかかりつけにしている患者は、その候補者に一票入れる。その家族もいれるかもしれない。開業医を中心に、そこにお世話になっている患者たちの票がみこめるのだ。日本医師会がこぞって自民党を応援するというスタイルができあがっていた。

 

ところが、高齢化社会がくると、診療報酬を上げ続けることが不可能になる。毎回のように診療報酬を下げられる。医師の不満が募る。医師たちは自民党を応援しなくなる。医師会推薦の国会議員に票が集まらなくなる。その議員の発言力がなくなる。また、診療報酬を下げる。この悪循環に陥っている。

 

今となっては自民党選出の医師会推薦議員に票をいれても、診療報酬は下げられるのは間違いない。そういう諦めの雰囲気になってしまっている。

 

僕自身は、自民党は嫌いなので、まちがいなく票はいれない。しかし、日本医師会には所属している。毎回選挙のたびに、医師会推薦の候補者のポスターが送られてくるが、院内に貼らないどころか、即座にゴミ箱に捨てている。お金もったいないから、うちには送ってこなくてもいいのだけど。ゴミを少なくするのも大切だから。僕自身は政治的に中立な立場なので、いいことを言えば、自民党でも共産党でも応援する。政党ではなく、いい政策を応援するというスタンスなのだ。

 

ただ、腹が立つことに、医師会会費の中に、日本医師連盟への会費も含まれている。日本医師連盟とは、日本医師会推薦の議員のバックアップ組織である。現在の日本医師連盟は、バックアップする議員を、自民党議員に一本化している。つまり、医師会に入会することが、必然的に自民党にお金が流れていくというシステムになっているのだ。もちろん、日本医師連盟には加入しない(お金を払わない)という選択も可能である。医師会に文句を言えばその会費を免除してくれるとは思う。ただ、このことがおおっぴらになってしまうと、日本医師連盟への収入が少なくなってしまうため、医師会入会時には、医師連盟への会費の流れは伏せられている。

 

別に日本医師会に限らないのだが、支持団体の利益を守るために、議員が政策を決めるというあり方が、世の中をへんにゆがめてしまうのは、今の日本社会を見ていればよくわかる。本当にそれでいいのだろうか。今も日本医師会は、少しでも医師会員の有利になるように、せっせと動いているのだが、集票力もなくなったので厳しいのだ。たとえ日本医師会の圧力があったとしても、政治家は国全体を正しくとらえた政策を作ってもらいたい。決して、支持団体にのみ利益がでるような方向にはいかないでほしい。

 

僕自身は、医師の団体としての日本医師会は重要だと思う。しかし、自分たちの利益しか考えないようなくさった団体は、早く衰弱しろとも思っている。