『え、迎えに行くって、ここ東京だよ』




「わかってる」



『1人でちゃんと帰れるよ』




「帰れるかもしれないけど、迎えにいく! 病院教えて!」


ヒートアップしそうな気持ちを必死に沈めて声のトーンを落とす





直ぐに返事が返ってこない、




後ろの方から


「涼太、迎えに来てもらったら?


母さん明日は空港まで送ってやれないよ」


と声がする。





家の方が側にいてくれてることが分かりホッとする。






母:「もしもし、舞さん? 涼太の母です。


この子、カッコ悪いとこ見られたくないだけなんですよ、


〇〇病院、△△にあります。


遠くから大変だけど、お迎えお願いしてもいいかしら?」



舞:「はい!もちろんです。明日迎えに上がります」




会社に有給休暇の申請をして、


そこからどうやってエアチケットを取って、


身支度をしたのか、、あまり記憶がない。






いつもはワクワクする羽田空港も、全然ワクワクしない。


きっと怖い顔になっていたであろう、


スマホを睨みながら、どうにか病院へと辿り着いた。








滑稽なほど慌てて出たLINE電話からは

間違いなんかじゃない、



涼太の声が聞こえてくる






『ごめん、LINEいっぱいくれてたのに返せなくて。


訳あって、今病院に居るけど大丈夫だから」』



落ち着いたその声に、


安堵と拭えぬ心配とで感情がぐちゃぐちゃになりながら、


どういう状況なのかを聞いた。





やはりあの玉突き事故のバスに乗っていた



バスが横転した時には寝ていて、衝撃で目が覚めたものの、


何の防御も抵抗も出来なかったから




頭を打ちつけてそのまま脳震とうを起こしてしまったこと


夜中に意識を取り戻して、異常がないか先生に診てもらっていたこと


右半身に打撲の痛みが残っていること


明日には退院出来ること、


ただし、スポーツや激しい運動はまだNG


普通の生活をする程度なら問題ないとのこと、


飛行機に乗ることも大丈夫でしょうと言われたこと、




それらを把握する。






「りょうた、病院どこ?教えて!! 迎えにいく!」







〝居ても立っても居られない〟



とは正にこのことだ!!!










涼太の実家の方から出ているバス、


羽田へと向かうリムジンバス、


時間は..............



乗っていてもおかしくない時間のバスだ......






乗客32名を乗せたバスは重軽傷合わせて 27名の負傷者を出し病院へ搬送された





このバスに涼太が乗っていたのならこれまでの辻褄が合う


・・・死傷者が出たとは言ってないから大丈夫だとは思うけど




……でも………とんでもない大怪我しているかも......





悪いことばかりが頭の中をグルグルと渦巻いている







そうして、ろくろく眠れないまま朝になった。




眠れないとは言っても、



僅かの時間睡魔に襲われることはあって、



頭も体も重い、、、



どんよりとしたまま動けない、、、





握りしめたままのスマホが光る!



え!



通話!!!



慌てすぎてスマホを落としそうになる





涼太からのLINE通話だった。