あの日私はそれを考えなかったのです | 『群青』

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天然石セラピスト
数秘術鑑定士
の資格あり(⁠。⁠•̀⁠ᴗ⁠-⁠)⁠✧

※写真のDL転載禁止

あの日

それを考えなかった。


いつものように

ルーティンで

いつものように

歩いたあの日。


本格的な夏が

始まろうとしていた日。




あの日から

4ヶ月。


秋も既に

終わろうとしていて


歩く度に

落ち葉がカサカサと

軽い音をさせる。



もう二度と

君のあの暖かな前足が

この落ち葉を

サクサクと

音を立てて踏むことはない。


もう二度と

枯れ葉の中を

楽しそうに

小走りに前をゆく

その背後を

眺めることもない。


くるりと丸まった

ふさふさの尻尾も

振り向いた君の

純粋そのものの

美しい瞳も


もう二度と。




当たり前に秋はやってきて

今年もまた

当たり前に君と

この枯れ葉の道を

てくてく歩くと


それについて

疑問にも思わなかった。


目に見える景色を

13年一緒に見て

時に急ぎながら

時に無口に

時に笑いながら

時に立ち止まり共に

紅の葉を眺めながら


何度も何度も

同じ道を歩いた。



季節はいつも

美しかったね。



春先は肌寒くて

地面から少し

緑の葉っぱが芽生えてくると

嬉しかった。


やがて道端の草花が

一斉に伸びだすと

蜂や蝶が舞う。


春の暖かさは

幸せの光で

優しい光で

君の茶色い背中を

ゆったりと照らすのを

いつも見ていた。



4月の桜

落ちた花弁で

桃色に染まる道。


5月のつつじ

咲き誇る鮮やかな色彩と

艷やかな緑。


6月の雨

紫陽花の花壇の横を

濡れながら

歩いたね。



だから



7月も

8月も

9月も

その後も


ずっと一緒に歩くのだと

思い込んでいたんだよ。


疑問にも思わなかった。



どうして今

君は私の横に

いないのだろう。


去年一緒に歩いた

落ち葉の道は

何も変わらないよ。


君が

私の横や

私の前を

きょとんとした顔で

まんまるの瞳で

当たり前のように

歩いていくんだ。


少し年を取ったねと

歩く速さを見ながら

話したっけ。


ねぇノア。


どの道を選んだって

君と歩かなかった道はなくて

どの道を見ても

君が横にいた日々が

記憶鮮明なんだ


君がいなくなってから

君との道を歩く度

私の目から

涙がこぼれて

こぼれて


泣くなと言い聞かせても

こぼれて

こぼれて

止まらないよ。


マスクをしてて良かったけど

時々すれ違う人に

変な目で見られるよ

(笑)


でも

何故横にいないのか

あの日君が

何を思って突然旅立ったのか

私のせいなのではないか

私がミスを犯したのではないか


何度も何度も考える。

わからない答えを探す。



呼吸も

心臓も

止まるその瞬間まで


君は声一つこぼさず

それは静かに

だけどあまりに早急に

逝ってしまった。



会いたいよ。


ただ

ただ


会いたいよ。



君が逝く瞬間を

思い出す度

息ができなくなる。


フラッシュバックする

恐ろしくも

悲しすぎるその

瞬間が

幾度も幾度も

私の脳裏に再生される。



死にゆくものは

止められない。


喚き散らしても

泣き崩れても

私はこの世界に留まり

君は魂の帰還場所へ

帰ったのだろう。

13年のこの世界での

旅を終えて。


私が喪失感と後悔に泣くのは

きっとエゴなんだろう。



それでもただ


会いたいんだよ。


ねぇ聞こえてる?

君に会いたいよ。


ノア。


追記

カテゴリーを【旅】にしたのは

ノアにとって生きた時間は

【旅】であって

それを終えて大切な場所に

帰還したのだと

思ったからです。