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梶町水路

梶町2丁目

木版画同好会「ばれんの会」

蔵本きみ子

 

今では珍しい「ひなだ」 (洗い場)が残っている。この名称の由来は雛祭りの「雛段」がなまって「ひなだ」になったとも言われてる。水路に沿って建てられた家々にはこの洗い場があって、そこで洗い物をしていた。

 

梶町の南方に幅約3メートルの淀川から古川橋の方へ流れている1本の用水路がある。白壁のある古い建物で、左右に石垣があり石段を七段程下りると、その用水路に出る。ここを「ひなだ」と呼び、語源はお雛様の「雛段」から来たと言われる。昭和の初期の頃には、この水は大切な生活水として用いられ、また灌漑用水であり、舟で農作物の運搬にも用いられた。川にはカラス貝や、カワニナがいて柳の下には、メダカの学校もあり、また夏には星空の下、川面を乱舞するホタルの姿も見られた。しかしよい事ばかりではなかった。この水のためチフスが流行ることもあった。やがて水道も引かれ、「ひなだ」の周辺は、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブと季節の花が咲き乱れ、前には「ひなだ公園」が造られ、サクラ、ハクモクレン等道行く人々を楽しませてくれる。明治時代から愛されてきた「ひなだ」を次の世にも、またその次の世にも大切に残していきたい。

廣瀬邦彦

(梶町2丁目)

転載:守口守口市民憲章制定25周年記念木版画集『守口百景』
作成:守口市木版画同好会ばれんの会1998年
テキスト入力:元市民憲章副会長 はまがみ