宝塚雪組東宝「凱旋門/GATOBONITO」 ありガートボニート | 百花繚乱

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駆け出し東宝組。宙から花のように降る雪多めに鑑賞。

後半に入り、こちらが見慣れたこともあると思うが、初期と随分印象が変わった。

凱旋門2018は、完全に恋愛を主軸にしたんだなと腑に落ちた。

ラヴィックとジョアンはひたすら甘く、亡命も社会も二人の障害。

二人の外にあるものは、すっぱりとボリスを始めとした組子たちと楽曲に預けたんだと思った。

それは轟さんの雪組への信頼だったかも知れない。

恋をしっかり見せることで、他の筋もメリハリがついて見えるようになった。

劇がなじんで、しっくりとして見えた。

 

 

だいもんボリスが、どんどん存在感を増していた。

彼女がやった二番手の役の中でも、このボリスは出色の出来だと思う。

ラヴィックを包み込み、舞台全体を包み、舞台の雰囲気に統一感を持たせていた。

前面に出る役ではなかったけれど、 支え、まとめ、引っ張り、舞台を創るあらゆることに責任を負っていた。

主役でなくとも、舞台を支えるその包容力がトップスターの証だと思った。

 

 

 

■トップスターの文脈

スターを見せる宝塚では、話の筋や演出がどうであれ、スターが場を持たせることができれば席は赤くならない。

 主人公の造詣が甘かろうが魅力のかけらもなかろうが輝いて見えるのは、トップスターという記号を持った者が演じるから

その記号は、客席と舞台の上が、10年にわたって舞台の外のストーリーを共有することで作られていく。

 

生徒と共有するストーリーを持っていること、コミュニティの文脈があると、作品は断然楽しみやすくなる。

演じている役者への期待感は、舞台解釈においても陽性の作用をもたらす。

逆に言うと、客席が舞台の上と同じストーリーを共有できないと、作品が成り立ちにくい

スターの文脈なしに完全に成立するような完璧な脚本は、宝塚では正直多くはない。

スターシステムに依存した世界で、スターシステムがいびつになったとき、その作品の質を正当に評価するのは難しい、とつくづく思った。

 

評論家のようなプロの方は劇そのものの出来・構成に集中できるのだろうが、哀しいかな、私のような凡百のファンは宝塚のあだ名の文化に浸り過ぎていて、邪念が作品への共感力も弱めてしまう。

それを振り払うのに、正直、随分時間と労力を必要とした。

雪組贔屓や特定の生徒さんのファンじゃない方達のほうが、純粋にこの作品を楽しんで評価できたのではないかと思う。

ファンであるがゆえに、轟さんはじめ生徒達が全力で作り上げている舞台に入り込みづらくなるなんて、なんて失礼で哀しいことか。

 

 

ただ、だいもんなら、今の雪組なら、どんな状況でも絶対に質のいいものにして見せてくれる。

その信頼はやっぱり裏切られなかった。

舞台に引き込まれ、演者に引き込まれ、後半戦は作品を楽しむことができた。

やっぱり舞台は、舞台の上にある

 

初演の高い壁を越えて新たなラヴィックに挑戦し、99回公演をこなした轟さんを始め、見事に相手役を努めた真彩ちゃん、組の要として全体をびしりと締めていただいもん、組が同じ方向を向いて一つの作品を完成させたことを心から讃えたい。

天候に悩まされたものの、叶海世奈さん、桜良花嵐さんの退団者のお二人も含めて、無事に千秋楽を迎えられて本当に良かった。

カテコの だいもんの「みんなーーー!!!!」の全力の叫びが、しみじみと胸に響きました。

 

 

■もろもろ

・あやなちゃん(綾凰華)

なんだあの警官、やたら跳びまくってるぞ、なんだあのキレ・・・とオペラを向ければあやなちゃん。今回はなかなか前にでるシーンはなかったけど、もうどこにいても飛び込んできますね。

 

 

アフリカンダンス

ゆみさんのウルフショート100万ルピー

ジャンベのリズムと、時折入るマリンバの音色がエキゾティックで気分が高まる。  

今回は歌とほぼ同じ旋律が、かすかに歌に重なっているだけ。

だいもんの歌の力、コーラスの声の圧を前面に押し出すようなシンプルなアレンジになっていて、呪術的な迫力が増していた。

これだけアフリカンダンスやるなら、いつか姫神とかライオンキングみたいな楽曲としても圧倒的な民族系の曲を宝塚でも聞いてみたい。

 

 

■だいもんの「ぼーっとしてます」

 見えないカルバドスでサリュー(乾杯)する、という最高におシャンティな最後のアドリブをひねり出しただいもんに「おおっ!!」と感心していたら、その後ボリスさん降臨みたいないかつい顔の無声の数秒がながれ、なんだ?!と固唾を呑んだら

 

「ぼーーっとしてました」

 

かわいさで殺すサマーかよ?!!

さっきまでボンゴありがとうしてた人かよ??

 

ランドセル揺らす小学生のように、大羽左右にふりながら大きな口で全力で「フォーエバータカラヅカ」を歌うだいもんがだいもんすぎて。

 

 

 

平成最後から二番目の夏はちぎみゆ達が

平成最後の夏はガトボニさんが燃やしてくれました。

本当に

 

ありガート、ボニート!!

おつかれサマー!!

 

 

 

 

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