百獣の王・真風涼帆  宝塚宙組 天は赤い河のほとり 観劇感想 | 百花繚乱

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駆け出し東宝組。宙から花のように降る雪多めに鑑賞。

百獣の王 真風涼帆

ユーリが怪力のスーパー可愛い女子高生& カイルがすでにオリエント制覇をなしどけてしまった超絶イケメン王だった。

 

真風、トップお披露目とは思えぬ貫禄で、王子というより百獣の王。

東方幕開け前半は抑え目に演じていたように感じたが、中盤で見たときはだいぶ押し出しが強くなっていた。

冷静沈着でしれっとした顔でエロイことを言う漫画のカイルとはまた違って、真風カイルの肉肉しい感じいい!!  (声:そらはねりく)

エピソードもセットも限られる舞台の上では強めのほうが映えるし、野趣あふれる真風味、待ってました。

 

何がすごいって、淡い水色がまるっきり似合わないのがすごいと思う。

ボルドーのマントとか白いもふもふの毛皮とかは多分本人私物だし、青は青でも荒川静香の青とかは皮膚だけど、ユニクロのピンクTシャツみたいな大衆パステルカラーは絶対無理だと思う。

春カラーのまるで似合わない骨太男役、惚れる。

 

真風らしいなあと勝手に思ったのが、平和をうたうシーン。

温かみと大きさのあるじっくりした歌で、胸に染みた。

真風が持っている地に足のついた聡明さや穏やかさ、スケール感が、国を率いるカイルの大きさとして見えた。とてもいいシーンだった。

トップ就任、おめでとうございます。

 

 

■主題歌の飛翔感

散々いわれているけれど、主題歌がすばらしい。

哀愁を帯びたキャッチーなメロディー、その背中に噛み付くように疾走してくるホーンセクションと組子のコーラスの重層感が実にドラマティックで、オリエントの覇国にふさわしい壮大なスケール。

 

サビの前に、ばつっと大胆にはさまれる間の絶妙な緊張

そこに滑り込んでくる、刀が鞘から抜かれるような効果音 (シンバル?? )

早いテンポで、じりじりと音が上昇していって、最高潮の天井の音に到達して終わる 「悠・久・に 流・れ・る 赤い河の よ・う・に」 

執拗なまでにたたみかけてくる16分音符と、馬の疾走を思わせる弦の波。

 

ゲーム音楽に特徴の永遠にループする感じ、何度も同じフレーズが反復されるうちに奇妙に高揚したトランス状態になる一種麻薬的な浮遊感がある。

 

そこにばばばーーんと、真風達が出てくるんですから、ありがとうっっ!!

みんな大好きイケコの第一幕終わりみたいに、小柳先生のオープニングの顔見世興行大好きです。

 

音楽は下村陽子さん、ストリートファイター2のBGMやファイナルファンタジーの音楽を作った著名な方だ聞いて納得。

全くゲーム音痴の私ですが、ストリートファイターの音楽はすごいインパクトがあったのは覚えてる。

キャラクターが「ready・・」 と言わんばかりにて肩で息して待機してるリズム、そこにぴったりはまった短い音楽のなかでありありと浮かび上がるキャラクター感は鮮烈だった。

今回も作品世界が一気に広がるすばらしいテーマソングでした。

しかも、今はゲームの音楽を演奏するコンサートもあると聞くが、宝塚ではこれがエブリデイ生演奏ですよ。なんたる贅沢。

 

 

■実写化不能な魔力

まどかちゃんは、おきゃんな少女ユーリのキャラクターにぴったり。愛らしいビジュアルもしっかりはまってる。

 

ユーリの知識がイシュタルとして崇められていくエピソードはもう少し見たかったな。

王家の紋章もそうだけど、それほど可愛くもない普通の女の子の、現代人としての常識が古代で奇跡と崇められていく様子は面白いし、日常の中に潜む魔力とか 「なんのとりえもない私でも愛される理由がある」 っていう少女漫画の伝統技法だと思うから。

 

でも、じゃあどのエピソードが実写化できるかと考えると

 

・鉄剣を選び、人の皮剥ぎ巨人ズワを倒す奇跡  ⇒残虐すぎて無理

・ライオンを倒し、イシュタルの名声を得る (マッティワザに一目置かれる)   ⇒ライオン調達不能

・背中につき刺さった弓矢を抜かせて、ザナンザ暗殺の真犯人を解明するシーン (ここでラムセス惚れる)  ⇒ 矢が刺さらない。

・伝染病にかからなかった奇跡 ⇒ 美的、絵面的に限界?

・敵の大将を色気で篭絡して落城 ⇒ お披露目から色仕掛けはまずかろう

・毒蛇に囲まれる城を、鷹を呼び寄せて全部食べさせて開場  ⇒無理

 

うん、実現不能。

ちなみに、愛馬アスランの活躍っぷりも泣けるんだけど、それもさすがに無理。

 

 

ユーリは戦いの女神として次々に武勲をあげていくが、その戦いの動機は常に弱いものを助けるためか、愛するカイルを助けるため。

原作で最も美しいシーンのうちのひとつが、赤い河のほとりで、永遠に日本を捨て、ヒッタイトにとどまる事を決意するシーン。

黄砂の中でアスランがたてがみを翻し、熱風にユーリの旗がはためく。

少女の潔癖な正義感や責任感、そして愛のために、時代も国も超えたヒッタイトで生きることを誓うユーリの凛々しさは、感動的な余韻を残す。

 

そのシーンに相当したのが、エジプトに囚われていたユーリとカイルが銀橋で再会するシーン。

二人だけの空間の中で、 「毎日楽しく生きてるのが当たり前だと思ってた。平和が誰かが命がけで戦って作ったのだなんて知らなかった。戦は怖いけど、愛するあなたと一緒に仲間と戦う。」 と懸命に宣言するユーリの台詞(不正確)、宝塚版でのユーリの戦う理由をなんとか盛り込んでいて、よかった。

「赤い河のほとりであなたと生きていく」 という言葉に応じて、「お前が捨てたすべてのものの代わりに、これから私がなろうというカイルの殺し文句も入り、そこへかぶさってくるテーマソング→ 銀橋での男1,2対決 →総力決戦シーン の流れ、いやがおうにも盛り上がる。

プロローグと、この最後の怒涛のシーンを見れただけでも大満足。

 

戦いのシーンは、組子が沢山出てきてびしばし踊るし、「これから皆でやっていくぞー!」という新生感があってとてもいいね。

 

 

■ラムセスの歌、ドリカム感。

なんだろう、「国を治める気量の女が必要なのさ」 とライトに歌ってるラムセスの、「あなたにサラダ感」

実はすっごいヘビイなこと歌ってるんだけど、

「レタスはなるべく青くて やわらかそうなのを選んでーー

 ザクロが小鳩に変身-- 1個は食べて7つ飾るわーー」 とか鼻歌歌いそうな勢い。

 

カイルにも似たような台詞があるんだけど、キキちゃんラムセスの「チャラいけど惚れた女には誠実」テンプレートが鉄板過ぎてかっこよすぎてつらい。

オッズアイにべたべた肩抱きでも、某渋谷のネオン街のチャラ男じゃなくて(キヨ、好きよドキドキ)、 「ああ、いいとこのボンボンだ」って思わせるキキちゃんの品のよさよ。

カイルも一番目が輝いてたのが、銀橋でラムセスと戦いあってるとこだったもん。

ユーリといるときより目が輝いてる気が・・

 

 

■ああ、岩よ

宝塚の舞台装置の石とか岩の表現力に常日頃から惚れ惚れしてるのだが、今回のはほんとに普通の岩じゃった。

やっぱ宝塚だから、岩にだって色気があらまほしい。

ローマの休日の祈りの壁、金色の砂漠の砂岩の装置なんて、素晴らしかった。

 

テーマソングとともに登場するプロローグシーンはかっこよかったけど、その後も幕が変われども変われども、舞台中央にでーんと鎮座まします岩

ホッタイ大劇場版のように、いまひとつその階段を使いこなしていないような・・・

 

セットの現実感もそうだし、魔術やスケールの大きな背景が消えた分、古代ファンタジーというよりアルな歴史物を見た感じがした。

平和、ライバル、仲間、恋愛、悲恋・・としっかり盛り込んであるけど、いかんせん尺が短くて王家ほどのインパクトにかけるのは苦しいところ。

でもそこは、ほら、原作者の篠原先生がおっしゃってくださってるように、原作を読めばいいだけのことでね。

篠原先生のツイート、とっても愛にあふれていて素敵です。

 

 

■再現率

・ユーリの侍女三人衆のアイドル感ハンパない。

 祭り前の3人が歌ってる曲とか、ご当地アイドルとか歌ってて全然おかしくない。

 天彩峰里ちゃんのハディまんまハディ双子の女官リュイ(水音志保)シャラ(花宮沙羅)、ただのエンジェル。リュイ、剣振り回す姿も美しい。

 

ミッタンナムワ(留依蒔世)の羊の丸焼き素手で食べてます的再現率素晴らしい。ビールジョッキで煽って肉の歌とか、革サンダルの歌とか歌ってほしい。

 

マリ殿下(七生 眞希)  優雅さ、優しげなまなざし、マリでした。

 

タロス(風馬翔)  もはやデジャヴ

 

華妃まいあちゃん&夢白あやさん  少女時代のお二人、美しかったー。まいあちやん演技うまくなったなあ。

 

・ウルスラの髪のヘアバンド見た瞬間に涙ぐんだ。

 

・小柳先生にとっての祭り = イケコにとってのホテル