こんにちは。
今回は月に1度のシリーズ「箱根路を駆けた名選手たち」です。今回紹介する選手は寺田 夏生(國學院大卒)です。
昨季の箱根駅伝から急上昇の気配を見せている國學院大。今季は6大会ぶりの箱根駅伝のシード権獲得も視界に捉えています。その國學院大が前回、そして前々回シード権を獲得したときに決定打となる走りを見せたのがこの寺田という選手です。
彼は、走力はもちろん、魅力的なキャラクターでもファンの心を掴んだ選手でした。今回はそんな寺田の箱根駅伝の歴史を振り返ってみます。
〇高校時代
長崎の名門、諫早高校出身の寺田。1年次からレギュラーを掴むと、3年連続で全国高校駅伝に出場しました。しかし、成績は2区27位、6区8位、3区30位と決して目立つものではありませんでした。
そして卒業後はまだ箱根駅伝常連校となっておらず、シード権を獲得したこともない國學院大に進学することとなりました。
〇大学時代
■1年次
寺田が入学したこの年、國學院大は主将の仁科、エースの荻野と充実期にあった2枚看板を武器に、これまでで一番強いチームとなっていました。そんな中、寺田も全日本大学駅伝予選3組21位、箱根予選73位と確実に走り、チームの中での存在感を高めていきました。
そして箱根駅伝本戦では10区の座を射止めることとなるのですが、これが歴史に残るハプニングを巻き起こすことに・・・
2区荻野を軸に序盤の速い展開をやり過ごすと、5区仁科が6人抜きの大快走で往路は6位でフィニッシュします。
復路も苦しみながら必死に食らいつき、アンカーの寺田に渡ったときには10位と21秒差の11位。國學院大の初のシード権獲得は寺田に託されました。
しかし、この年のシード争いは大混戦。一時は8位集団に6チームが固まる混沌とした展開になりました。そこから一人、また一人と脱落していき、最後の最後に残ったのは谷永(日体大)、小林(青山学院大)、甲岡(城西大)、そして寺田の4選手。この4選手の中で上位3位まで入ればシード権獲得。4位ならシード落ち。文字通り天国と地獄を分けるラスト200mでした。
その中で初めに仕掛けたのは寺田でした。キレのあるスパートで後続を振り切り、初のシード権獲得は間違いないかと思われました。
そんなとき、衝撃のアクシデントが起きました。
ゴール地点の120m手前でテレビ中継車を追ってコースを間違えてしまったのです。このミスで30mほど距離をロスした結果、3選手に抜かれてしまいました。しかし、ここで終わらないのが寺田の凄いところ。
最後まで諦めずに走りぬき、ゴール直前に城西大を交わし10位でゴール。悲願の初シード権獲得を掴み取ったのです。
白熱のシード争いとゴール直前でのコース間違え、そしてゴール後の「あぶねえ~」というコメントは各種メディアで取り上げられ、寺田は一躍時の人となりました。
余談ですが、このコースを間違えた交差点のことを陸上界隈では「寺田交差点」と呼んでいます。
■2年次
実力以上に注目を集めることになった寺田。しかし、話題性に負けない実力をつけられるように不断の努力を重ねました。その成果がさっそく出たのがこの年でした。
チームにとっての課題は前回、山上りでごぼう抜きを見せた仁科の穴をいかに埋めるかでした。
寺田はその5区に立候補。13位で受けた襷を見事9位まで押し上げ、2年連続のシード権獲得の立役者になりました。
■3年次
今度はエースとして2区で流れを作っていた荻野が卒業。彼の後釜としてエースになったのはやはり寺田でした。
しかし、この年は1区が19位と出遅れたこともあって寺田も区間15位と物足りない走り。序盤で流れを作れなかったチームは14位に沈み、シード権を手放すことになってしまいました。
■4年次
大学最後の年。箱根予選では13位と他大のエース達に負けず劣らずの走りで本選出場に導くと、箱根本戦では当然のように2区を任されました。
しかし、またしても1区が出遅れ。前年の嫌な記憶がよぎりますが、寺田はそんなことでは自分の走りを見失わないほど逞しく成長していました。18位から4つ順位を上げる区間7位の好走。
後続でブレーキが発生してしまったことからシード復帰はなりませんでしたが、寺田の成長が印象に残るレースでした。
〇社会人時代
國學院大卒業後は中堅チームのJR東日本に入社。ロードを中心に取り組んでおり、マラソンへの挑戦が進められているところです。
また、先日開催されたロードレースでは「寺田夏至」と誤った名前のゼッケンを着用。またしても陸上界にクスッと笑える話題を提供しています。
〇最後に
今回伝えたかったことは、話題先行となった選手が本当に実力もつけて、最後は堂々としたエースに成長したということです。國學院大の成功の象徴といえば寺田です。でももう、それを塗り替えるべき時期に来ているでしょう。浦野や土方といった今のエース達は新しい國學院大の象徴になれる存在です。今季はそれを見届けられる年なのです。
次回からはまた、チーム構成早見表に戻ります。また読んでください。
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