「わゎぁなんか悲恋って感じ~今もダメなんですかねやっぱ」
「さぁな俺は良く知らんから」バイトの日本語発音が気になる
カチャカチャとパソコンを打ち「やっぱそうなんだ大変なんですねぇ」
こいつの偉い所は直ぐ調べる事だ「あぁこの国は平和だな」


「でもじゃあいったいその国の人は誰に為に働いてるんですか」
「国とかそれこそ宗教とかかな」「ウッソー信じらんないでも・・・」
『日本はいい国ですねみんな自分の為に働いていますね』実は
彼女の母の言葉が咀嚼できずに宙に浮いたままになっていた


暫くしたある日偶然彼女と近くの道端で出会った「やあお帰り」
「先日は母がお喋りしたみたいで ありがとうございました」
いつ聞いても美しい発音だ「とても喜んでいました」「ハハハ」
「いつも一人だから喋りたくてすいません」「いいお母さんだ」


パステルグリーンに塗られた壁に夕日が当たり古い建物がひと時輝く
そのマンションと呼ぶにはおこがましい小さなエントランスに消えて行った
今頃階段を4階まで上がり母国語で『ただいま』と云うのだろう
その相手が結婚相手の彼になる日はいつ訪れるのだろうか


『帰化したいけれど難しいし改宗するのも大変ででも日本なら』
そうこの無節操なまでに平和なこの国なら上手くやれるだろう
(宗教間問題が無くなれば現在の紛争や戦争の4/5は無くなる)
何かの雑誌でそんな記事を読んだ事がある 日本人で良かった


沈み行く夕陽を眺めるような感覚で建物を眺めていると声がした
『コバサンチョットキテヨ』呼んだのは5階の中国人入居者である
「どうしたんですか」「テレビ映らないよ」「地デジ化しました?」
グローバル化の波は確実に押し寄せ平和ボケもいつまで続くことか


(そう云えばあの国は本当に美人の国なのだろうか だとしたら)
事務所に帰りその国に着いてウィキらずにいられない私である
(よし此処まで調べとけばバイトの質問もかわせるだろう)
こうしてくだらない事に時間は割かれ本業を忘れる不動産屋だ




終り