夕焼けが空を染めグラデーションがかかり東からは暗闇の空が迫る
その空の下を携帯の電波のはぶつかる事も無く無数に飛び交う
「社長駄目です抑えきれません」小松原専務は父に泣きついた
「工場長直ぐ戻って」「この案件はキャンセルの場合法的束縛は」
修一も少ない言葉数で話す「東京じゃ何処も分かんねぇから・・・
明美の所がいいや」「珍しいね電話なんてフフ寂しいんでしょう」
唯一着信音が留守電になったのが修の携帯電話である浜松から
静岡まで高速を飛ばしその間脱いでいた上着の中で鳴っていた
工場長はチェックイン直前に旧知部長からの電話で浜松へ帰った
「修一お前はウチの期待の星だ」「なんで俺なんかに」「あぁバスケ
だよ俺もやっててなでもこの小さいなりだろ上手くは無かったが
だから残る連中は皆バスケ関連だ 俺の能力なんてそんなもんだ」
そう言われればドルフィンズにも同じ職場の者はいるがリストラの話は
誰もしていなかった「俺独りで研修受けるんですか」「そうだよ
そしてお前がチーフオペレーターになれ」全くピンとこない話であったが
バスケ好きだと云う工場長が更に好きになった気がする修一だった
静岡に着き工場を目指す修は現地近くの体育館の灯りに魅かれ
中を覗いてみるとドルフィンズが練習していた「チワーッス」何人かの
若者が気さくに挨拶するのに頷いて答え「人を疑わない奴らだな」
田舎のほのぼのした練習風景を眺めて羨ましく思い車に戻った
工場に着いたのは20時思いのほか浜松静岡は遠い事を知った
2階の事務室に明かりが点き微かなだらプレスの機械音が聞こえる
工場の接道面をゴルフで培った歩測で測り測量図と照らし合わせた
動産不動産の数字は頭に入っていたので現地の大きさ確認だ
「大丈夫だ」書類を仕舞い暫く携帯を見なかった事に気付いて
着信が多い事を知り掛け直す「何してんだお前は」柳田である
「現地を測量図と確認してました見るのは初めてなもんですから」
「現地は今どうなってる」「静かなものですよ田舎そのものです」
「そうか明日午前中に田川を神戸に向かわせた打ち合わせろ」
一方的に電話を切った柳田のホワイトニングされた歯を思い出して
嫌な気分と同時に(なぜ田川さんが来る?)胸騒ぎを覚えた
弁護士の資格を持つ会社のトラブル解消部隊のトップなのだ
電話をしてみたかったがもう21時近く遠慮した 自信はあった
微かな暗雲を振り払うように自分に言い聞かせる(ノープロブレム)
妻に遅くなった詫びの電話を入れ工場に十字をきって車に乗った
工場の二階では疲れ果てた面々が黙って睨みあいを続けていた