その年の冬江戸は寒波に見舞われ凍てつく様だ
更に幕府の財政は逼迫し市中の金も廻らず
どこもかしこも不景気の風が吹き荒れる
庶民は皆安近短の神頼みと浅草初詣でとなる
我が藩は上野の山から真っ直ぐに浅草時へ向かう
途中の広徳寺門前に江戸屋敷を構えていた
門前町は仏具屋が多くまたその飾りを作る職人街
浅草詣での参拝客に仏具を売る店が連なる
奥に作業場を持つ鰻の寝床の様な建物がひしめき
夕暮れとともに明かりは消えお江戸といえども
夜の早い街である そこに国元より殿と老中家老
道真公が内密に遣って来たのは正月七日であった
浅草より南へ三里新橋にほど近い水茶屋にて
「紹介したい者がおるので参る様に」と
知らせを受けて直ぐに籠を飛ばしてやってきた
綺麗どころの揃った座敷にて今井氏と向き合った
今江氏は南部藩の上場に旗本として関わり
配下の城の家老職を与えられていた切れ物との
ふれ込みで歳は孤葉と同じであるなぜその
待遇を捨て我が藩を志願したのかはよく知らない
「とにかくわしが是が非にと三願の礼を持って口説いた
殿も事の他お喜びじゃしかしいきなり常陸の国では
活躍の場が少のうてのまずは江戸にてと思うておる」
既に酒の入った殿は江戸の女子に夢中である
「はっ承知仕りました」「何分よしなにさて今日は無礼講
今井殿もくつろがれるが良い おい女将酒を持て」
上機嫌な道真殿は大いに盛り上がり十八番の《雪国》を
歌い出す始末(まぁよい国元の客分なのだから)
「今日からお世話になりもうす」「やぁ良くぞいらした弱小藩故
お恥ずかしい次第だが力を貸して下さるとの有り難き幸せ」
今井氏が江戸屋敷に出勤したのは三月まだ寒波の
影響で市中に雪の残る寒い日であった
「ところで孤葉殿拙者の禄高の事だが如何ほどでござろうか」
「はて道真殿からはご提示有り申さなんだか」奇妙である
「さようその辺りは江戸にて判断されるとの事で」
国元からの指示も無く客分としてしか見ていなかった
「いやはやそれは何とも失礼した如何ほどをご希望でござろう」
「南部では千石近く頂いておったゆえそれを基準に」「千石とな」
禄高さえも確定せずに移籍するとは誠に珍妙な方だ
そう思うと今井氏が馬鹿か利口か分からない
「至急国元と相談の上ご提示させていただきまする」
「ところで今江殿はどのような仕事が得意分野でござろうか」
「これからは電脳箱の時代これが無ければ仕事は出来ぬ
道真様よりその辺の構築をと話を頂いておりますが・・・」
何も聞いていない事に少々腹立たしくその日を過ごし
夜になり国元と電線会話で問い合わせをするも返答は
「江戸屋敷財政は江戸にて処理いたすよう国からは
びた一文出さぬとにかく今江氏の件良きにはからう事」
それでなくとも財政難の江戸屋敷全て押し付けられては
たまったものではない 愚痴の一つもこぼしたくとも
家臣の前では憚られる 一人悶々として根岸の安酒場で
煽る様に酒を飲むしかなかった(なんか変だな)
その何かは皆目見当つかぬが考えても仕方が無い
(とりあえずは今江の奴を旨く使って殿に認めて
貰うしかないな 禄はどのくらい交渉できるだろうか)
曇り空からまっ白な粉雪がまた舞っていた
離在瑠弧葉三十代最後の雪を煙と共に見ていた
更に幕府の財政は逼迫し市中の金も廻らず
どこもかしこも不景気の風が吹き荒れる
庶民は皆安近短の神頼みと浅草初詣でとなる
我が藩は上野の山から真っ直ぐに浅草時へ向かう
途中の広徳寺門前に江戸屋敷を構えていた
門前町は仏具屋が多くまたその飾りを作る職人街
浅草詣での参拝客に仏具を売る店が連なる
奥に作業場を持つ鰻の寝床の様な建物がひしめき
夕暮れとともに明かりは消えお江戸といえども
夜の早い街である そこに国元より殿と老中家老
道真公が内密に遣って来たのは正月七日であった
浅草より南へ三里新橋にほど近い水茶屋にて
「紹介したい者がおるので参る様に」と
知らせを受けて直ぐに籠を飛ばしてやってきた
綺麗どころの揃った座敷にて今井氏と向き合った
今江氏は南部藩の上場に旗本として関わり
配下の城の家老職を与えられていた切れ物との
ふれ込みで歳は孤葉と同じであるなぜその
待遇を捨て我が藩を志願したのかはよく知らない
「とにかくわしが是が非にと三願の礼を持って口説いた
殿も事の他お喜びじゃしかしいきなり常陸の国では
活躍の場が少のうてのまずは江戸にてと思うておる」
既に酒の入った殿は江戸の女子に夢中である
「はっ承知仕りました」「何分よしなにさて今日は無礼講
今井殿もくつろがれるが良い おい女将酒を持て」
上機嫌な道真殿は大いに盛り上がり十八番の《雪国》を
歌い出す始末(まぁよい国元の客分なのだから)
「今日からお世話になりもうす」「やぁ良くぞいらした弱小藩故
お恥ずかしい次第だが力を貸して下さるとの有り難き幸せ」
今井氏が江戸屋敷に出勤したのは三月まだ寒波の
影響で市中に雪の残る寒い日であった
「ところで孤葉殿拙者の禄高の事だが如何ほどでござろうか」
「はて道真殿からはご提示有り申さなんだか」奇妙である
「さようその辺りは江戸にて判断されるとの事で」
国元からの指示も無く客分としてしか見ていなかった
「いやはやそれは何とも失礼した如何ほどをご希望でござろう」
「南部では千石近く頂いておったゆえそれを基準に」「千石とな」
禄高さえも確定せずに移籍するとは誠に珍妙な方だ
そう思うと今井氏が馬鹿か利口か分からない
「至急国元と相談の上ご提示させていただきまする」
「ところで今江殿はどのような仕事が得意分野でござろうか」
「これからは電脳箱の時代これが無ければ仕事は出来ぬ
道真様よりその辺の構築をと話を頂いておりますが・・・」
何も聞いていない事に少々腹立たしくその日を過ごし
夜になり国元と電線会話で問い合わせをするも返答は
「江戸屋敷財政は江戸にて処理いたすよう国からは
びた一文出さぬとにかく今江氏の件良きにはからう事」
それでなくとも財政難の江戸屋敷全て押し付けられては
たまったものではない 愚痴の一つもこぼしたくとも
家臣の前では憚られる 一人悶々として根岸の安酒場で
煽る様に酒を飲むしかなかった(なんか変だな)
その何かは皆目見当つかぬが考えても仕方が無い
(とりあえずは今江の奴を旨く使って殿に認めて
貰うしかないな 禄はどのくらい交渉できるだろうか)
曇り空からまっ白な粉雪がまた舞っていた
離在瑠弧葉三十代最後の雪を煙と共に見ていた