♪ガード下では 目の見えない男が

   ハモニカ吹いてる

盲目の人生ですがまだ少し生きていたいと

   書かれた段ボールの横で♪


by SION


昨日も新宿です 仕事ではなくデートで

デートと言っても 妻とですが・・・


新宿といえば我々夫婦にとって故郷のようなもんで

お互い独身時代の職場も遊び場も新宿である

妻はバブル景気で成り上った企業の社長の愛人

私も会社の子会社を任され仕事的には充実してた


平成元年 新宿のワンルームマンションの価格は

坪当たり2千万と言われ銀行もジャブジャブ貸した

公示価格で銀座を抜いて新宿が1位となり

利回り3%を高利回りと呼び不動産投資は白熱

賃貸契約書には更新毎に賃料5%UPが謳われてた

更に礼金敷金4カ月づつ・・・・恐ろしい


妻は毛皮のコートを纏い今日は熱海で明日は箱根

毎夜スーパーカーに乗って高級旅館で夕飯を貪り

私もバニーガールクラブのメンバーとなり

生意気にクレジットカードを使いまくる


住宅ローン専門金融 住専が作られ100%ローン

エリート行員は本業より大蔵省担当となり

酒池肉林のノーパンしゃぶしゃぶを食い

風営法改正前の歌舞伎町は世界に誇る歓楽街

誰もが右肩上がりの経済を信じて疑わなかった


私より5年年下だとこのころの本当のバブル景気

実感はないだろう 頂点はほんの一瞬だったから

ここ4.5年の不動産バブルなどの比較ではない

一万円札を鼻紙だと思ってる奴がゴロゴロしてた


そんな頃 知り合い結婚した我々は新宿が大好き

昨日は懐かしくその頃の道順でデートしてみた

あったはずの店はことごとく無くなり

仕方なくチェーン店ですませ 久しぶりにボーリング

あの頃は一晩で10ゲーム以上投げていたが

2ゲームで退散 スコアーも150を落とし年を感じ

締めに食べるラーメン屋だけ何事もなかったように

あの頃のまま綺麗とはいえない店を開けていた


懐かしく楽しい中年夫婦のデートではあった

歌舞伎町から新宿駅東口へ線路沿いを歩く

西口とを繋ぐガード下の歩行者用通路

その前で昨日は単独でドラマーが覚醒している


このガード下でどれだけの歌い手を見ただろう

バブルなど全く関係なく食うことにやっとの奴ら

あの当時にも確かにそんな奴らが沢山いた

「俺はどっち側の人間だ?」自問自答繰り返し

本当は彼らと一緒に歌いたかったのだと思う


一縷の希望 彼らはそのガード下で

出来るはずのないメジャーデビューを望み

当時の私は 頑張れよ と千円札を投げ入れる

「頑張れよ」言葉は 今自分自身に帰ってきた


原点回帰 過去にこの場所で自分を捨てました

しかし今は小さな望みをこの場所で誓います

這い上がって見せる 一人でもやれると

少し年をとった妻は心配を隠し歩みを緩めてた


この不景気の中 不動産業界で独立

頭を下げてだけいれば会社には残れた

下げた頭の上を時代の波と若い風が吹く

自分の居場所は自分で作ろうと思った

成功するのかしないのかのリスクは

ガード下の雑音にかき消されたのだ


心配そうな妻は すきにすればと 横を向く

1年間凌げた 生活は楽ではないが何とか

こうして新宿をぶらつくくらいの生活は

これからもここに来て 這い上がるための

歌を心の中で歌おうと思う


ドラマーはピッチを上げた 汗が噴き出している

眼を閉じてかすかに上を向いて叩き続ける

まるで 私を応援しているかのように


♪綺麗なビルの立ち並ぶ足もとで

   すえた夕張と消毒液が煮立ってる♪