「ギリギリ間に合ったんだ」
電磁波測定器を持つ電気工事士は、嬉しそうだった。
彼の話によると。
A子さんとは、ある会合で知り合った。
A子さんは、近所に娘夫婦が家を建てることになり、携帯基地局の高周波の影響が心配という話をしていた。
A子さんの住む集落は、長い間、携帯基地局問題で揺れている。
既に工務店も決まり、A子さん宅は彼の事務所から遠かった。
電磁波カットの家を造るなら、工務店との連携は必須だった。何より、施主と深い信頼関係がないと、アドバイスはできない。
「何かお役に立てることがあれば」と、名刺だけ渡して、この日、A子さんと別れた。
数か月経って、A子さんの住む集落の近くを通ることがあった。
建築中の家があった。まさかとは思ったが、車を降りて、現場をのぞいた。
A子さんがいた。
丁度、外壁の工事中だった。
彼は、携帯基地局のある方角を確かめた。
「こちら側の外壁に、高周波対策をしたらいいと思います」
そして、サーモバリアというアルミの薄いシートを外壁の内側に入れることを勧めた。
工事の段取りを考えると、ギリギリ間に合うタイミングだった。
A子さんは、すぐに工務店と連絡を取った。
幸運は続いた。
工務店は、以前、サーモバリアを断熱材として、使ったことがあると言う。
快諾してくれた。
彼のもとに、完成した家の高周波は測定の結果、問題なし、という報告が届いた。
この話をして、ふと、電磁波測定器を持つ電気工事士は、神妙になって言った。
携帯基地局問題を抱える人たちは、自分の健康を二の次にしている人が多い。
彼らこそ、電磁波から、自分の体を守る対策をとることを忘れないで欲しい、と。
話は、少し変わるが。
私は、家を建てるとき、ハウスメーカーや工務店を随分まわった。
住む家には、電磁波や化学物質が無い方がいいだろう、という程度の認識の人と、実際、健康被害にあって、シェルターを求めるように「自分の家」を造りたいと思っている人。
両者が考える「家づくり」は天と地ほどの違いがある。
ハウスメーカーや工務店は、後者に困惑する。困惑が理解に発展することは難しい。
これが悲しい。
