目が覚めると僕はアスファルトの上に倒れていた。


僕の目にはアスファルトの青々とした稲の植えられた田んぼが写っていた。


身体を起こそうとするが身体がいうことをきかない。


昨日の謙の言葉が脳裏をよぎった。


太陽に照り付けられぐんぐんとアスファルトは熱くなっていく。


首の痛みからくる冷や汗と、暑さからくる汗とで身体の水分はどんどん抜けていった。


このままでは脱水症状で命が危ないかもしれない。


しかしこんな田舎の田んぼに囲まれたところで人の助けは期待できないだろう。


そんなことを考えていたとき、今までにない激痛が首を襲った。


そして首筋に液体が伝わるのがわかる。


その液体はアスファルトに赤い水溜りを広げていった。


ズキンズキンと今までに経験したことのないほどの痛みが全身を支配する。


僕は死を覚悟した。


こんなことになるならもっと早く病院へ行くべきであったと後悔した。


血の水溜りはどんどん広がっていく。


それは身体からどんどん抜けていく命そのもののように見えた。


その光景から目を背けたいが身体は動かない。


僕は目を閉じた。


目を閉じると今までの記憶が一気に頭の中を走りぬける。


これが走馬灯というやつだ。


もう死が近い、そう思ったとき声が聞こえたような気がした。


幻聴だろうか、はたまた天使の声だろうか。


「やばい、こいつ死ぬかな。」


ああ、これはきっと天使の声だ。


天使が僕のことを心配してくれているのだ。


「慎重に出ろってこういうことだったのか。俺の身体じゃなくて宿主の問題だったんだな。」


宿主?


なんだか天使がわけのわからないことを言っている。


まあいい、きちんと僕を天国まで運んでくれればそれで。


「こいつが死ぬと俺も死ぬんだよな、たたき起こすか。」


天使がそう言った後、僕の頭は強い衝撃を受けた。


「おい起きろ、死ぬぞ。」


重いまぶたを持ち上げるとなにかが僕の顔を覗き込んでいる。


僕を迎えにきた天使は真っ赤な色をしていた。