いた。
口を開けていたのだ
宮本だ
大きな口を開くカバ
宮本だ。
同期の芸人である。
たまたま今日はライブが一緒だったようだ。
彼との付き合いは非常に長い。
実は芸人になる前から知っている。
養成所の門を叩く一年前、
僕が入ったバイト先に彼がいた。
7年近く前のことである。
そこで僕が芸人になりたい旨、そのためにお金を貯めていることを伝えると、彼もなぜか共鳴し、気付けば彼も養成所に入っていた。
普通この流れからいくと、この後二人はコンビを組みそうなもんだが、一度もコンビを組んでいない。
というか、脳裏によぎったことすらない。
それは何故か。
人間性だ。
その中の代表的な一つとして挙げられるのが
『食い意地がきたない』ことである。
かつて、僕らがコントの最中にリンゴを使ったことがあった。
ネタ終わりでリンゴを捨てようとすると、
宮本「それ食べても良い?」
大西「え?これ食べるの?!」
間髪入れずに、
宮本「ありがとう!!」
しばらくすると彼は、
宮本「うわ!痒い痒い!!!俺、リンゴアレルギーなんだよ!!」
食い意地がアレルギーを追い越した瞬間である。
目の前の食べ物にありつくことで頭がいっぱいの宮本は、自分が持ってるアレルギーの存在を忘れリンゴに噛り付いたのだ。
これぞ宮本。
そしてここで特筆しておきたいのが、筆者は「一口ちょうだい」と言ってくる輩をあまり好まないということだ。
それは何故か。
嫌だからだ。
全部自分で食べたいのだ。
ただ目の前に欲している人がいる以上、恵まないわけにはいかないので仕方なしにあげる。
そしてもっと納得いかないのが、
「一口ちょうだい!一口あげるから。」
と言ってくる輩である。
一口もらう罪を、自分も一口あげるということで放免してもらおうという卑しさが垣間見える。
そちらは譲歩したつもりかもしれないが、そもそもこちらとしては欲していないモノをもらい、欲しているモノを与えるわけだから、ギブアンドテイクは成立していないのだ。
確かに僕の考え方は偏っている。
ただ、
【大西翔】という人間を語る上で、こうした下地があることを認識しておいて頂きたい。
それをふまえて、このあとの宮本の行動を見て頂きたい。
遠い昔のことである。
ライブ前、
宮本「コンビニ行かない?」
大西「良いよー」
アメリカンドッグを買う筆者。
ガムを買う宮本。
このあと【あの宮本】ならどうせ、
「一口ちょうだい」
か
「一口ちょうだい!俺ガムあげるから」
などと戯けたことを言ってくるであろう。
そう予想した。否、覚悟した。
しかし【あの宮本】は遥か上を行く。
宮本「あーん。」
口を開けていたのだ
そこに言葉はない。
もらうことを前提とした開口。
こんな奴とは組みたくない。
そう固く誓った。
そして時は流れ、西暦2018年3月。
そんな宮本の愚行もすっかり忘れ、平穏な暮らしを送っていた。
昨日のことである。
家でふと動物番組を観ていると、
餌を持ってる女の子に対してカバが、
宮本だ
餌を食べるチンパンジーが、
宮本だ
大きな口を開くカバ
リンゴを食べるチンパンジー
全てが宮本とダブる。
頭が痛くなり、テレビを消しすぐ就寝。
この期に及んで僕を苦しめる宮本。
そして迎えた今日だ。
しばらく会っていなかったが、
コチラの感覚としては昨日の今日だ。
宮本はどうだ?
成長したのか?
変わったのか?
僕を発見するなり、
宮本だ
《今日の辞書》
宮本[みや-もと]
食い意地がきたない、という意。『悪さをすると宮本になるぞ』といったような、なまはげ的な使われ方をすることもある。
※同義語:がめつい、卑しい
(例)
ママ「じゃあたっくん、どれ食べるか選びなさい。」
子供「やっぱりファミレスは最高だ!迷っちゃうなあ〜!じゃあコレとコレとコレと、、あとママが頼んだやつも少しちょうだい!」
ママ「たっくん!一つにしなさい!宮本になるわよ。」
子供「宮本じゃないもん!僕は宮本じゃ、、、宮本じゃないもん!うえ〜ん!」




