遂に。


遂にこの時が。






思えば17年前の夏。


父親に連れられ初めて観に行ったプロレス。


そこで目にした


圧倒的な華


華麗な技


唯一無二の存在


僕は『武藤敬司』に魅了された。




それからというもの影ながら応援させて頂いてた訳だが、遂にその憧れの存在にお会い出来る日が訪れた。


武藤さんがプロデュースされている焼肉屋に、武藤さんご本人がいらっしゃるとの一報を受けた僕は、同期の『さんだる』ソウを誘ってイベントに赴くことにした。





店に到着すると、店の前には武藤選手の看板が。




これは、この看板の前で写真を撮らなくては。


『武藤敬司』には神無月さんのモノマネでもお馴染みの【プロレスLOVEポーズ】というものが存在する。



そして写真を撮る際、ファンは十中八九このポーズを取る。
それは常識であり、もはや礼儀だ。






これはどういうことかというと。


『ウサインボルト』と写真を撮る際、



このポーズを取るようなもので。






『TWICE』と写真を撮る際、



TTポーズを取るようなもので。








インド人がカレーを食べる際、



右手しか使わないようなものである。






が、しかし。


この男はそんなことお構いなしだ。


プロレスの知識が全くないソウは、そんな『プロレスLOVEポーズ』を当然知るはずもなく。


その結果、



看板の『シンプル腕組みポーズ』を真似るという愚行に及ぶ。


何をしている。


こんなもの真似ても何の意味もない。


教えておくべきだった。


この『腕組みポーズ』が武藤選手の代名詞だと思われても困る。


というか、『プロレスLOVEポーズ』を取っていない看板の武藤さんにすら腹が立ってきた。


写真と気をとりなおし、店内へ。





店内に入り、焼肉に舌鼓をうっていると店員さんがコチラにやってきた。





店員さん「こちらの紙にお名前書いて頂ければ、武藤選手とカズ・ハヤシ選手からのサインを差し上げますので宜しければどうぞ!」





自分の名前を書いたら、その指定した名前入りでサインを書いて下さるようだ。


さらに今回武藤さんと一緒にご来店されていたカズ・ハヤシさんのサインまで付いてくるとは!


そういえば長年ファンをやってきたが、こうしてサインをもらうことなんてしてこなかった。


何だか照れ臭いが、純粋に嬉しい。




『大西へ』



と発注し、裏でお二人が書いて下さっているサインを楽しみに食事をして待つ。


しばらくして店員さんがやってくる。






店員さん「お待たせしました!こちらサインになります!」





と二枚のサイン色紙を渡される。


しかしここで一つ大きな落とし穴が。




どっちが武藤だ?

あろうことか、サインを貰ったことも見たことも無かった為、どちらが武藤選手のサインか判断できない。


直接ご本人から渡されたわけではないので、判別出来なかったのだ。


否、これは言い訳に過ぎない。


完全にファン失格だ。


情けない。


俺としたことが、、、


恥を忍んで周囲のお客さんにバレないよう、小声で店員さんに聞いてみる。






大西「あの、、、すみません。」


店員さん「はい!」


大西「これってどちらが武藤選手のサインなのでしょうか、、?」


店員さん「えーと、これは。。こっちが武藤さ、、いやこっちかな?えーと、、」



いやあんたも分からないんかい。


一体サインとは何なのか。


これじゃ誰が書いても一緒じゃないか。





何はともあれ、その後無事どちらが武藤選手のサインか識別することに成功し、ちょうどそのタイミングで写真撮影の順番が回ってきた。


いよいよご対面だ。





あっという間だった。


いや正確には時間はたっぷり用意して頂いたし、ご本人にも何か言葉をかけてもらったはずだが、何と言われ、自分が何と言ったかさえあまりよく覚えていない。


聞きたいこと、伝えたいことがたくさんあったはずなのに興奮しすぎて、緊張しすぎて、何も出来なかった。


チクショウ、こんなに好きなのに。






そんな中、このレジェンド武藤に全く臆することのない男が現れる。


無知とは、時に武器になる。


ソウの登場だ。



武藤さん「君、矢部くんに似てるわ!」


ソウ「え?矢部くん?」


武藤さん「ウチのスタッフよ!」


ソウ「へえーあざっす!」


武藤さん「はははっ!」



なんだその雑な返しは!!!



あの武藤さんがせっかくイジって下さったにも関わらず、この男はあろうことか全く緊張感のない返しをしてみせたのだ。


しかも結果的にウケているではないか!!!


何故だ!!!


何故こんなにも愛している俺が何も出来ずもがき、プロレス素人のこの男がイジられハマっているのだ!!!


大仁田厚みたいな顔してるくせに!!!






写真撮影を終え、テーブルに戻ってから後悔の念に苛まれる。
あの時こう言えば、ああすれば。。


そんな僕を尻目に、気楽にタバコを吸うソウ。





ソウ「手、すげえデカかったなあ〜!」





この野郎め。


ファンでもないくせに。








いや、待てよ?


そうじゃないか。


彼は全く興味が無いにも関わらず、今日僕に付き合ってくれたのだ。


それをど返しにして、僕は彼に何を嫉妬しているんだ。


むしろ僕がしなければならないのは感謝だ!


危ないところだった。


あと一歩で彼に汚い言葉を浴びせかけるところだった。





そもそも今日、彼は楽しんでくれたのだろうか?


もうウンザリだろうか?







ふとタバコを吸ってる彼に目をやる。




楽しんでくれたみたいで何よりだ。



【ライブ出演情報】

5月
25日 普通のワカテライヴ 19時〜 新宿fu-
26日 渇いた心に口づけを 24時半〜 阿佐ヶ谷ロフトA
29日 こじらせライブ 19時〜 新宿ハイジアV-1

6月
3日 首領猿14時半〜 新宿バッシュ
6日 ケイダッシュシルバー 19時〜 新宿ハイジアV-1
10日 コント式 16時20分〜 新宿ハイジアV-1
🆕16日 疾風迅雷舞 14時半〜 新宿バッシュ
17日 コント合宿 season3 20時半〜 池袋GEKIBA