僕の相方はおしっこが近い。


したくなってから、出るまでが異常に早い。


その為、しばしば粗相をする。





この前も、


駅からいつもネタ合わせしているカフェへと二人で向かおうとした際、尿意を催した加瀬部。



大西「大丈夫?」


加瀬部「カフェまでは持ちそう!急ごう!」



まるで急な雨に降られ避難場所を探すが如く風を切り、走る相方。


エレベーターで3階まで上がり、店内に駆け込もうとしたその矢先。


エレベーターの前に広がる人、人、人。


踊り場で店内に入りたい人たちが長蛇の列を作り、ごった返している。


僕ら芸人からしたら平日も休日もへったくれもないので忘れていたが、世間は休日の昼下がり。


いつもの店の状況とは違う様相を呈していた。









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こうなるともう終わりだ。



加瀬部はこのカフェに照準を合わせ発射するべく、必死の思いで我慢してきたわけだ。



ゴール地点のはずが、一瞬でスタート地点へと早変わり。



そのままエレベーターで下へと降る。



加瀬部が身を悶えながら、僕に問う。



加瀬部「一番ちかっ、、一番近いコンビニはどこだあっ!!!」



もう僕の知ってる加瀬部はここにはいない。



普段声を荒げることのないこの男が藤原竜也、ジャックバウワーよろしく目を血走らせて絶叫している。



エレベーターの中には同じくカフェに入れなかった女子大生二人組も同居しているが、そんなことお構いなしだ。



そんな状況の中、必死に股間部分をまさぐりながら身をよじり耐える加瀬部。



そして必死に耐えようとした結果、












バビッ、ブピッ、ブッ、ブッ、ぷ〜っ












大量の屁がこだました。



『なにかを得ようと思ったらなにかを失わなければならない』



いつの日か、本で読んだことがある。



加瀬部はおしっこを我慢しようと思ったら、人としての尊厳を失った。



アレはまさに人間が壊れていく音だ。



エレベーター内でドア前に並んで、僕らの前に位置していた女子大生二人の背中が揺れる。



爆笑?


苦笑?


失笑?


否、冷笑だ。



完全に人を蔑む背中だ。



ただ加瀬部はそれどころではない。もう恥も外聞もない。



ドアが開くと同時に女子大生をかき分け、一目散に走る相方。



しかし一度足を止め、こちらを振り返り女子大生に向かって一言。



加瀬部「ごめんなさいっ!!!」



律儀な男だ。



そう言い残し走り去った。









いつの日か、ドラマで観たことがある。



ずっと主人公の男性に想いを寄せていた奥ゆかしい女性が、その溢れる気持ちを抑えきれず突然キスをする。お互いその場に立ち尽くし、意表を疲れた主人公の男性は呆然。そして自分の思いがけず取った大胆な行動に女性は顔を真っ赤にし、「ごめんなさい!!」と言って走り去るシーン。



完全にアレだ。



もしくは、



幼なじみでお互い気持ちはあったものの、その気持ちを素直に伝えられないまま時は過ぎ、やがて女性は結婚することに。そして結婚式当日、バージンロードを歩く花嫁は走馬灯のように今までのことが思い出される。「これで良いのか?」自問自答する花嫁。「ごめんなさい!!」チャペルに響く声。気づいたら彼女の足はその幼なじみの元へと向かっていた。



完全にコレだ。






ドラマだったらその後顔を真っ赤にして走り去った女性も、幼なじみの元へと向かった彼女もハッピーエンドを迎えるのだろうが、現実では顔を真っ赤にしながら近くのコンビニのトイレへと向かった加瀬部に救いなど無い。



僕もすぐにあとを追いかけたが、もうその姿はない。



とりあえずその場で待つことにする。



しばらくして戻ってきた相方。



加瀬部「いやー間に合った!セーフ!」




完全にアウトだ
 
エレベーター内の記憶が彼の海馬から完全に消えている。


こんなことがよくある。


そして先日、悪夢は再び起こる。(続く)



4月
8 コント合宿 20時〜池袋GEKIBA
11 ただし×こうじのおおごと!!企画ライブやっしまうが!!20時〜中野芸能小劇場
14 疾風迅雷舞 14時半〜新宿バッシュ
19 ケイダッシュゴールド(企画出演) 19時〜 新宿バティオス
22 疾風迅雷舞 19時半〜 新宿バッシュ
5月
🆕2日 ケイダッシュシルバー 19時〜 新宿ハイジア
🆕14日 ワルアガキライブ 19時〜 下北沢シアターミネルヴァ