開口一番
「開口(かいこう)」とは、口を開くこと、話し始めることですが、ここでは能楽の世界での「開口」についてを取り上げます。
将軍宣下などの儀式的な能楽を演ずる時、脇能(わきのう)(正式の演能の最初に置かれる能)の際に、新作の祝賀の文句を謡(うた)うこととなっていました。
その文句は、役者が前もって節を付け暗記するのですが、声に出してはいけません。
能が演じられる本番になって初めて、声に出すことができたのです。
「開口」とはこのようなことで、本番前には決して口に出さず言葉を慎むことです。
つまり、将軍に対しての新詞は、将軍に対して先ず最初に聞かせなければならないもので、それ以前には黙読黙誦(もくしょう)するだけで、練習のためにも言葉に出してはならないのです。
これらの事例から、例え一度であっても口から発した言葉には重みがあることを伺うことができます。
