「祝詞」という美しい言葉
「恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)す」
という言葉を聞いたことのある方は多いと思います。
祭典時に神職が、神様に奏上する「祝詞(のりと)」という言葉の最後の部分です。
意味としては「(神様に)恐れ多くも申し上げます」ということです。
祝詞の起源は古く、『古事記』『日本書紀』に天照大御神がお隠れになられた天岩屋戸にて、天児屋根命(あめのこやねのみこと)が「布刀詔戸言(ふとのりとごと)(祝詞)」を奏上したことが記されています。
祝詞は現代語ではなく、古来日本で使われてきた言葉であります古語が用いられます。
現代語のほうが分かりやすいのではという声も聞きますが、古語を用いることで響きは美しく感じられ、神様の心に届くものとなります。
祝詞の中でよく使われる、私が響きが素敵だと思う箇所を何点か挙げてみます。
・今日乃生日乃足日尓(きょうのいくひのたるひに)
今日という生き生きとした満ち足りた日に
・各母各母負持都職業尓勤美励美(おのもおのもおいもつつとめにいそしみはげみ)
それぞれの仕事や学業や生活などの役割に努力して
・夜乃守日乃守尓守護里恵美幸閉給比(よのまもりひのまもりにまもりめぐみさきわえたまい)
一日中お守りいただき恵みをいただきしあわせにしていただく
平安時代の歌人紀貫之(きのつらゆき)は『古今和歌集』でこの古語について、
「和歌(やまとうた)は鬼神をも動かす」
と述べてあります。
詩人や歌人が古語を大切にするのは、それが美しい言葉であり、言葉の力が発揮されるからだと思われます。
人々の心からの願いを、選りすぐられた言葉によって奏上する祝詞とは、まさに躍動する言霊を通して神様と人とを執り持つ「生きた言葉」なのです。
