1973年10月6日、ユダヤ教の最も神聖な祝日「ヨム・キプール」の隙を突き、エジプトとシリア軍がイスラエルへ電撃的な奇襲攻撃を仕掛けました。「まさか今日攻めてくるわけがない」と油断しきっていたイスラエル軍は大混乱に陥り、世界を巻き込む「第4次中東戦争」の火蓋が切って落とされたのです。

 

この砂漠の激戦は、巡り巡って地球の反対側にいた日本人の日常を思わぬ形で破壊しました。産油国が原油価格の引き上げと供給制限を打ち出したことで、世界的な「オイルショック」が発生。すると日本では「石油が止まれば紙が作れなくなる」という突飛な噂があっという間に全国を駆け巡ったのです。

 

不安に駆られた人々はスーパーへ殺到し、トイレットペーパーを片っ端から奪い合う前代未聞の大狂騒曲が巻き起こりました。中東での緊迫した戦争が、なぜか日本の主婦たちが紙の山を抱えて奪い合うシュールなパニックへと直結したのです。過酷な国際政治の火花と庶民の心理が絡み合い、日本の日常をあっけなく麻痺させた、歴史に残る皮肉で奇妙な連鎖劇でした。