32歳で巨大卵巣癌と宣告され、自ら医師でありながら心身共に擦り減る生き方をしてきたことを反省した私。
これからの人生をしあわせあつめの旅とし、それを人と分かち合うために綴ります。
世界の生き物達を訪ね、いのちと幸せについて学び直しています。
約一年前、私は、卵巣腫瘍が見つかってから、最も辛い時期を経験していました。
それは、手術の痛みでも、抗がん剤の副作用でもありません。
治療の選択、でした。
実は、手術後すぐに、悪性、とわかったわけではありませんでした。
術前には、たぶん良性、少なくとも悪性ってことはないでしょう、と複数施設の婦人科医から言われていたのですが…
(後でわかったことですが、私の癌は、若年にはとても珍しいタイプのものだったので、どの先生も想定できなかったのだろうと思います)
手術後の病理検査で、どうやら良性ではないらしい、ということがわかったのです。
境界悪性か悪性のようだ…と。
婦人科の主治医が言うには
境界悪性ならこのまま経過観察
悪性なら残りの卵巣子宮全摘+半年間の抗がん剤治療
だと。
(私の年齢や状況も考慮して、の話です)
それは、未婚の私にとって、天と地ほども差のあることです。
ところが、その重大な診断を下す病理医達の間で、境界悪性か悪性か、意見が割れていると言うのです。
細胞の様子が、とても微妙なのだと…
その議論は、長く続きました。
悪性ならば、もう次の治療を開始しないといけないタイムリミットが迫っていました。
(そこまで慎重に議論を続けて下さった病理の先生方には感謝です。)
結局、最終診断は病理のトップである教授に委ねられ、悪性と言って良いだろう、ということになりました。
ただ、あまりにも診断が困難だったため、セカンドオピニオンを勧められました。
もう時間がない、ということで、教授の診断を待たずに他の病院へセカンドオピニオンに行きました。
結果は、やはり悪性だろう、と。
そこで、
了解!じゃあ卵巣子宮全摘と抗がん剤治療します!!
…とはなりませんでした。
診断のプロ達が集まっても、こんなに苦慮するくらい微妙な診断なのに、それで卵巣と子宮を全摘するの?
複数の先生が、悪性ではないと診断しているのに?
悪性でなければ、残りの卵巣も子宮もそのまま、危険と苦痛を伴う抗がん剤治療もしなくて済むというのに。
医師というのは立場上、良い方と悪い方で判断しかねたら、悪い方を取ることがしばしばあります。
良い方に賭けて、結果悪かったら、大変なことになるからです。
私も同業者だから、よくわかります。
さらに、細胞の診断は難しいもので、スパッとクリアカットにはいかないことも多いということも、よく知っています。
そんなことを知っているだけに、私に下された悪性、という結論は、限りなくグレーに近いと考えられました。
それに私は未婚の32歳、やっと苦しい職場を辞めて、これからは結婚も視野に、女性としても再出発しようとしていた矢先。
こんな大切な時に、これからって時に、グレーな診断のために女性としての機能を全て失ってしまうのか…
(※卵巣子宮全摘することで女性ではなくなる、という意味ではありません)
何の症状もなく元気なのに、「念のため」卵巣子宮を全摘することで、妊娠も出産もできず、この歳で更年期の症状を抱え、もしかしたら結婚さえできなくなるのでは…
(※卵巣子宮全摘することで、結婚できなくなるわけでは決してありませんが、当時の私にはそう思えてしまう理由がありました。親しかった男性に、全摘の可能性を話したところ、急に連絡が途絶えてしまったのです。
更年期症状も薬でコントロールすることができます)
周りには、命あっての人生、少しでも再発のリスクを減らせるなら、迷うことではないでしょう?と言う人もいました。
私も、いっそ明らかに悪性、と言われていれば、こんなに悩むことはなかったと思います。
ほとんどグレー、ちょっとの判断の差で、私の人生が180度変わってしまう…
その状況が、決断の大きな障壁になりました。
とはいえ、もうタイムリミットでした。数日のうちに、決断しなければなりませんでした。
生命を取るか、女性としての人生を取るか。そしてタイムリミット。
それはそれは、経験したことのないほどの、大きな心の負担となりました。
今まで流されて生きてきた私にとって、1人で抱え込むには、あまりにも重い問いでした。せめて支えてくれる旦那さんがいたら…なんて思ってしまったのも事実です。
結局、私の出した答えは、リブログの内容の通りです。
抗がん剤治療のみ。
決意した3日後くらいには、抗がん剤治療が始まりました。本当に、ギリギリ…アウトくらいでした。
これで良かったのかどうかは、わかりません。
ただ、少なくとも、自分で限界まで悩んで出した結論だから、納得はしています。
ちなみに、そんなにグレーに近い診断だったのなら、ステージは1番軽いⅠaだったんでしょ?
と思う方がいるかもしれませんが、残念ながらそんなことはありません。
細胞の顔つきとステージは、別の話なのです。
私にとっては壮絶な経験でしたが、大きな気づきがありました。
癌患者が一番苦しむことが、治療の決断である場合がある。
身をもって、それに気づかされました。
それでも、最終的に決断するのは患者自身。
辛いけれど、誰かに決めてもらうのではないのです。
医師や周囲に言われたからと言って、自分が納得できない判断はしてはいけない。
自分が納得できてこそ、そこから前向きに戦っていくことができる、と思います。


