二十世紀が生んだ最大の科学者とされる二人の人物、一人は「相対性理論」で名を馳せ
たアインシュタイン博士、そして片や「精神分析理論」で知られるジークムント・フロイ
ト博士ですが、前稿で触れたエリック・バーン博士はフロイトが病的に精神を病んでいた
人々への治療が対象であったのに対して、バーン博士は精神を病んでいなくとも人には悩
みや心の安寧を求めて常に心は働くと分かり易く説いたのでした。それが当ブログのバッ
クボーンにもなっています「交流分析理論(T/A)と言う訳です。
彼が当該理論の中で説く「ストローク」と言う用語などは考えて見れば普段の私たちの
暮らしにあって、やり取りする自然の言葉から立ち居振る舞いや表情に至る迄を捉えたも
のであり、子どもたちが学齢期に入って更に三年も経つうちにしっかり身につけるもので
あるとなれば、学校で精神衛生や保健衛生と言った一見取り就き難い捉え方を避け、
「いま君の言った言葉に、ターちゃんはとても喜んだね。
それって、貰って嬉しいストロークだよ」
と言った具合に日常会話の中で暗に心の働きを分かり易く教えることも出来るでしょう。
今や社会問題となって久しい苛めの問題も、こうした日常のストロークの持つ役割から
追って行けば苛める側と虐められる側の実態が子どもたち同士で見えて来るのではないで
しょうか。
「交流分析理論(T/A)」では「ストローク」に限らず「子ども心の私」に「親心の私」
そして「大人心の私」と言った「心の内なる三人の私」 等学齢期の子どもたちにとっても
関心を寄せ易い心の捉え方が説かれています。小学校高学年から中学校に至る時期にこうし
た分かり易い心の働きを知る機会を作ることは極めて意義あることとこれ迄幾多の苛めや登
校拒否のご相談に関わって来た一カウンセラーとしては思う次第です。
自らの心の内に三人の私がいることを知れば、「いま・ここ」で向かい合っている相手に
どの様な心の働きが生じているのか自身で掴め、そのことによってその先の事態をより良く
するためには如何すれば良いのかをも知る切っ掛けになるでしょう。そしてこの学びの為の
時間で大切なのは先生が生徒を前に教壇に立ち一方的に話して聴かせるのではなく、グルー
プワークで向かい合った生徒同士のやり取りからスタートすることが何より重要と見ていま
す。
先生はグループを見廻りながら、求められて発するコメンテーターの役割で十分用が足り
る筈です。勿論その前に先生自体が交流分析理論について知識を得て置くことが前提ではあ
りますが、間違いなくグループワークの成果は見えて来るでしょう。
嘗て山形県天童市のマット死苛め事件を機に配置された各学校にはスクールカウンセラー
が配置されて久しいにも拘わらず、登校拒否や苛めの問題が増えこそすれ減少しない背景に
は校内のカウンセラー相談事案が学級担任から教務主任更には教頭、校長へと報告の流れそ
のものに問題はないのでしょうか。
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