真鶴 川上弘美

平成の文学とはなんだったのか のなかで、会談の場所に行く途中で読んでいたと言及があり、従前から名作ということで題名を知っており、同じ作者の「センセイの鞄」なども好きだったので購入。

 

なかなか理解が難しい小説。いろいろな事象が説明されないまま最後まで放置されて終わる、説明のない小説。主人公のその神経症的な孤独・不安と、その不安をそのまま表現する文体に共感できるかどうかが、この小説を好むかどうかを規定していると思う。

 

この本に出てくる人々は、主人公以外もその不倫相手にしろ、失踪した夫にしろ、あるいは娘までも、不安と孤独を抱えており、そしてそこから脱出したいと思いながらも、その不安を愛でている人々であるような気がする。

 

ラストに光に満ちた表現がある、からっぽになりそこが別のもので満たされて光っている。

そこには素朴で健啖な人々と、似ている顔で表現されているしっかりとしたつながりがある。 作者はそこを出口としているようだ。

 

★★★★

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