図書室を入ると右側に木製のbookスタンドがある。
手に取る人を待っているように本の表紙が並んでいる。
一通り見てから奥へ進むのがルーティンだ。
気になるタイトルや表紙があればページをめくり、読めそうかどうかをチェックする。
その日は急いでいたので足早に並んでいる表紙をさっと見た。
下段の表紙に目が留まった。
ひときわ目立つ存在感。
表紙の絵が何であるかはタイトルを読めば分かる。
少々躊躇したが、タイトルに惹かれたので中を開いた。
中を見るとグラフや数字もあった、化学?難しそう。
これは無理だと思い、その日は借りなかった。
でも、別の日に図書室に行くとやはり目に付く、存在感抜群だ。
難しそうだけど借りてみよう。
「ミミズの農業改革」作者は金子信博さんという方だ。
夏目漱石集を読み終えていないうちに、別の本を借りてしまった。
夏目漱石集の 吾輩は猫である を読んでいる。
にわか読書人間、本を読みたい気持ちは満載なのになかなか読む時間がない。
はい、言い訳だ。
吾輩は猫である 残りは100ページほど、読み終えるのは当分先になる。
せっかく借りたのだから2冊を同時に読むことにした。
以前は速読に関心があったので、早く読むことを意識していた、けれど、遅読の勧めの記事を読んでから、理解しながら読むことを心がけている。
読み終えたい気持ちを抑えて、ゆっくりと読む。
遅読の勧めの記事から 遅読 という言葉を知った。
恥ずかしながら、おそどく と読んでいた。
でもある時、この漢字は本当に おそどく と読むのかと気になったので、調べてみたら ちどく と読むことが分かり苦笑した。
漢字もろくに読めないのに、速読をしようとすると飛ばし読みになる。
理解力も乏しいのに、速読をしようとすると流し読みになる。
たくさんの本を読みたい気持ちはあるけれども味わって読みたい気持ちも大いにある。
本の世界に入り込んで楽しみたい。
今は読めない漢字や、分からない言葉は調べながら読んでいる。
一度調べた漢字でも、次に同じ漢字が出ると忘れている場合は、また調べる。
面倒な繰り返しで、時間が掛かる。
でも、何度か調べるとさすがに覚えていくので、反復は大切だと実感する。
「ミミズの農業改革」から ひこばえという言葉を知った。
稲を刈られた後の田んぼに生えているものは何だろう、と思っていた。
車を走らせると田んぼと畑が多い。
枯れた稲が整列して育っているように見えた、あれは何だろう。
ひこばえと言うのだ。
稲刈りをした後の株に再生した稲
稲孫、穭(ひつじ・ひつち・ひづち)は、稲刈りをした後の株に再生した稲。 いわば、稲の蘖(ひこばえ)である。 学術的には「再生イネ」という。 一般には二番穂とも呼ばれる。 穭稲(ひつじいね)・穭生(ひつじばえ)ともいい、稲刈りのあと穭が茂った田を穭田(ひつじだ)という。
稲孫 - Wikiwand
私が知っていることはないに等しいほど、世の中には分からない言葉が多い。
分かると楽しい、大実感!
のろのろカタツムリ、読書を楽しんでいる。
農業で生計を立てようと考えているわけではないが作物を育てたい気持ちがある。
耕さない農業とはどういうものか気になっていた。
土壌生物の営みが土に良い環境をもたらしていることを本を通して知ることができた。
人の手を加えない土壌は生物多様性に繋がり、環境や作物に良い影響を与えるようだ。
野菜を作ってくださる農家の方達に感謝しながら、これからの農業を考える1冊となった。
あまり見たくなかったミミズが、有難い生物に思えた。
自然や生物の力を受け取って生きているのだ。
アパート暮らしなので、作物を育てるのはプランター栽培になる。
過去に2回プランター栽培に挑戦したが、ほとんど育たなかった。
それでもわずかながら実った作物を喜んで美味しく食べた、最高に美味しかった。
今年はリベンジする。
プランターにミミズは来てくれるかな?
ほとんどミミズを見ることがない、今度見た時はきっと違う目で見るかもしれない。
ミミズの農業改革は2月から借りている。
吾輩は猫であるは昨年の10月から借りている。
2冊とも返しては借りるを何度も行った。
同じ本を借りる度に図書室の方に「予約が入っていないので貸し出しできます」と言われた。
そう言われると何故か笑いそうになった。
我が物顔で2冊を借り続けた。
そして、とうとうどちらも同じころに読み終えた。
ミミズの農業改革は2ヶ月、吾輩は猫であるは6か月。
読書とは無縁だったので、これくらいは掛かってもokだ。
めでたいめでたい。
吾輩は猫である を読み終えたら、夏目漱石集は終わりにしようかと考えていたが、読み終えたことでいい気になった。その後に続く 坊ちゃん も読んでみたい。
坊ちゃん
親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。小使に負ぶさって帰って来た時、おやじが大きな眼をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴があるかと云ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。
(青空文庫・ネットより抜粋)
面白いよね~
図書室の大きな窓の側で本を読むのが好きだ。
晴れた日も曇り空も雨の日も雪の日も、どんな天気も構わない。
窓の向こうの外の世界を感じながら、静かな室内で分からない漢字や言葉を調べながら本を読むのが好きだ。
心が丁寧になるように思える。
想像力を働かせながら言葉が織りなす世界へと溶け込んでいく。
たまに襲う眠気も心地良い。
青空が広がっていた。