五月が去るとて
何を悲しむ。

たとえ伏す身といえど
熱き血潮をたぎらせて
生きると決したは
この五月の時では
なかったのか。

五月が去るとて
何を悲しむ。

この胸に
真白きバラを
押しつけて
進もうと誓いしは
この五月の時では
なかったのか。

五月が去るとて
何を悲しむ。

ああ だがこの若き十六歳を
むかえての
五月が再びまいらぬと思えば
我胸は涙でむせぶ。

(矢沢 宰「光る砂漠」より)